(オススメ 編集部から)文楽は実は面白い

2017年09月10日

 ある時期までは大衆の娯楽であったのに、いまや文楽は、誰もがふらりと足を運ぶ芸能ではなくなった。元NHKアナウンサーの山川静夫さんは学生時代は歌舞伎に通い詰め、大阪勤務時代には「毎日が文楽と共にあった」という。劇場や番組で接した技芸員らとの交友をつづる『山川静夫の文楽思い出ばなし』(岩波書店・1836円)を読むと、その思い出自体が貴重な記録だと思えてくる。
 大阪勤務の始まりが昭和37(1962)年。文楽も生活の中に生きていたのだろう、ラジオで放送していたとは驚きだ。太夫、三味線、人形遣い。本にあまた登場する名人上手は、はっきりいって一部しか知らないが、特に義太夫を語る太夫は、師匠や芸の話になるとしばしば大泣きし、山川さんももらい泣きする。文楽は「情」の芸能なのだ。
 番組はあれこれ残っているはず。口跡あざやかな山川さんと太夫たちとの語り合い。音源があったら、ぜひ聴いてみたいところだ。(大上朝美)

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