(オススメ 編集部から)江戸時代の「有害図書」

2017年12月17日

 表現や出版の自由が憲法で保障される現代でも「有害図書」は規制されるが、江戸時代はどうだったのだろう。佐藤至子(ゆきこ)著『江戸の出版統制 弾圧に翻弄(ほんろう)された戯作(げさく)者たち』(吉川弘文館・1836円)に詳しく、興味をそそる。
 著者は草双紙、洒落(しゃれ)本、滑稽本など、近世の娯楽小説「戯作」の研究者。本書では主に寛政期、文化期、天保期のお上と戯作者や版元との攻防史を描く。
 例えば老中水野忠邦が主導した天保の改革では「奢侈(しゃし)」を禁止し、「華美な風俗」を規制する。合巻(ごうかん)は「挿絵が複雑になり、表紙は多色摺(ずり)で高級な仕立て」を、人情本は「好色・情死などを趣向とし、甚だ淫(みだ)らな傾向」を問題視される。戯作者や版元ら関係者は取り調べられ、絶版や過料(罰金)を命じられた。
 洒落本の山東京伝は筆禍事件に翻弄され、人情本の為永春水は「不埒(ふらち)」と弾圧された。公序良俗を惑わす基準とは何か。いつの世も表現者と権力者は対抗するものらしい。(依田彰)

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