「こうすれば」詰め込んだ 今村昌弘「屍人荘の殺人」

2018年01月17日

今村昌弘さん=滝沢美穂子撮影

 神戸市在住の作家、今村昌弘さんのデビュー作『屍人(しじん)荘の殺人』(東京創元社)が注目を集めている。鮎川哲也賞を受賞し、昨年10月に刊行されると、「このミステリーがすごい!」など、三つの主要なミステリーランキングで1位に。前代未聞の仕掛けで「クローズド・サークル(閉鎖された空間)」を作り上げるなど、固定観念を打ち破る新たな本格ミステリーになっている。

 関西では名の知れた私大、神紅(しんこう)大学のミステリ愛好会に所属する葉村譲(はむらゆずる)は「神紅のホームズ」の異名を取る会長の明智恭介、同じ大学に通う探偵少女、剣崎比留子と一緒に、映画研究部の夏合宿に参加する。

 ペンション「紫湛(しじん)荘」に集まったのは、現役の大学生や卒業生ら計14人。近くでは音楽フェスが開かれていたが、そこである大事件が発生し、ペンションは孤立。全員が死の恐怖におびえる極限状態の中で、殺人事件までも起きる。

 「素人の立場から、過去に読んだミステリーで、もっとこうすればいいのにと思った要素を詰め込んだ」と今村さん。特に気になっていたのは探偵だ。どうしてあんなに自信満々で、危険な事件に首を突っ込めるのか。「正義感だけではない、謎を解くための強烈な理由が欲しい」。求めたのは、探偵でさえ死ぬかもしれないという緊張感だ。

 読みやすさにもこだわった。登場人物は、ペンションの管理人だから「管野唯人」、りんとした女性なので「高木凜(りん)」など、出来るだけ覚えやすい名前にした。建物の見取り図もつけた。

 強烈なのはクローズド・サークルの作り方だ。吹雪の山荘や嵐の孤島ではない、新しい閉鎖空間とは何か。ふと思い浮かんだという斬新な手法で、それまで平穏だった世界を、まさに一変させる。

 「何か変なことをしたいんです。関西人らしく、人と違うことをやって目立ちたいんですかね」と笑う。

 現在32歳で、元放射線技師。大学生の時、国家試験の勉強の現実逃避で小説を書き始めたといい、本格的に創作活動を始めたのは社会人になってから。「精神的、体力的にも集中できるうちに挑戦したい」。29歳で仕事を辞め、3年の期限を区切って執筆に専念してきた。

 理想とするのは、手がかりはきちんと提示し、読者自身の力で真相にたどり着くことが出来るミステリー。「全員をだましたいのではなく、見逃さず読んでくれた人には解ける問題をつくっていきたい」(渡義人)

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