普通とは何かを問う 浅生鴨「伴走者」

2018年03月07日

浅生鴨さん

 作家・浅生鴨(あそうかも)さんの『伴走者』(講談社)は、障害者スポーツにかかわる二つの物語を収めた本だ。テンポのよい会話とスピード感あふれる描写でぐいぐい読ませ、けれどときどき、何かがちくりとひっかかる。

 「伴走者」とは視覚障害のある選手と一緒にレースに臨み、選手の「目」となって他の選手やコースの状況を伝える人。二つの話の片方はマラソン、もう片方はスキーの選手と組むことになった伴走者の物語だ。

 視覚障害者ランナーの内田は、横柄な元プロサッカー選手。女子高校生スキーヤー晴(はる)は、天才肌だが怠け者。癖のある人間性が、あえて強調して描かれる。

 「障害者に普段あまり接してないと、逆境に負けず頑張るすごい人だとか、聖人君子みたいな人だとか思ってしまう。でも実際は、ずるい人も弱い人も当然いっぱいいるんです」

 内田がライバルを動揺させようと卑劣な作戦を練る姿に、あるいは晴が「できないことだけ助けて」と伴走者に反発する場面に、私たちの胸はちくちく痛む。障害のある人たちをどこか弱者のように見ていることを、その都度気づかされるせいだろう。「結局、普通って何だろうということを考えて書いたんだと思います」と浅生さんは言う。

 浅生さんはかつてNHKに在職。パラリンピックの際に宣伝映像を手がけて伴走者の存在を知り、それが今作につながった。「障害者と健常者の間にいるような存在だなと思って、印象に残っていたんです」

 どちらの物語にも、パラリンピックが終わると障害者スポーツへの世間の関心は薄れた、という描写がさりげなく織りこまれる。

 「メディアへのちょっとした嫌みです。東京大会が決まってからパラリンピックも大々的に注目されているけど、終わったらまた元に戻るんだろうなって」。この人は冷静に見つめているのだろう。出版社がパラリンピックにあわせて本を出すことも、新聞社が開幕直前にインタビュー記事を載せることも。

 「物語として楽しんでくれればいいんです。読み終わって何か考える人がいればいいし、障害についてへえそうなのかって思うだけでもいい。知ることから、すべてが始まると思うので」(柏崎歓)

伴走者

著者:浅生 鴨
出版社:講談社

表紙画像

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