青春小説家、第一章の集大成 住野よるさん「青くて痛くて脆い」

2018年03月25日

平台にずらりと並ぶ=東京都豊島区の三省堂書店池袋本店

 「キミスイ」と呼ばれる2015年のデビュー作『君の膵臓(すいぞう)をたべたい』が220万部を突破。若い世代に熱く支持され、出す小説はいずれもベストセラーに。注目の作家、住野よるさんの『青くて痛くて脆(もろ)い』(KADOKAWA・1512円)は「青春の終わり」を描いた長編小説だ。
 書き始める前から1行目は決めていた。「あらゆる自分の行動には相手を不快にさせてしまう可能性がある」。主人公の「僕」は自分にこう言い聞かせている。人に近づきすぎないことが人生のテーマなのだ。大学入学直後の講義で隣に座った秋好(あきよし)は、初対面の僕にぐいと距離を詰めてくる。正反対の二人は「モアイ」という名の秘密結社を作るが、3年後、僕をめぐる世界は変わっていた。
 これまでは原稿をひとりで書き上げ、編集者に渡してきたが、「初めて担当編集者といちから一緒に作り上げました」。「秘密結社の話が読みたい」という編集者の言葉がきっかけ。「秘密結社? なんだそれと思いました」。多いときには週に3日、まるで学生のように、ファミレスやカラオケを転々としながら朝まで打ち合わせを重ねて仕上げた。
 描いたのは就職活動が終わってから卒業するまでの時間。青春の終わりだ。「持てあますような自由な時間をどう過ごすか。僕はだらだらしているイメージでしたが、自分のためだけでなく社会活動にささげる人もいる。自分とは違う、そんな人たちの内面や純粋さに興味がありました」
 10代の主人公たちの切なくまぶしい青春小説を書いてきた。『青くて痛くて脆い』は帯に「青春が終わる」というコピーがつく。「この本は住野よるの第一章の集大成。膵臓が有名になって、青春小説家とも呼ばれていますが、その思われ方ごと、今作で倒すぞ、という気持ちです」
 顔も年齢も性別も公表していない。デビューまで、小説の新人賞に投稿しては落選を重ねていた。「キミスイ」も3~4件に投稿してすべて1次落選。「誰かひとりでも読んでくれたら」と、小説投稿サイト「小説家になろう」に掲載したところ、読者の反響を集め、出版につながった。途中で読むのをやめられる可能性があることを今も考えているという。「小説を初めて手に取る人も面白いと思えるように1ページ目から意識している。本は読書家だけのものでなく、もっと大きなエンターテインメント。ライトノベルから純文学に近いものまで、いろんなことをやりたい」(中村真理子)

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