女子高生、名推理 麻耶雄嵩「友達以上探偵未満」

2018年05月09日

麻耶雄嵩さん=2018年4月17日午後、大阪市西区、田中圭祐撮影

 論理を突き詰めることで、非日常のゆがんだ空間へと読者を誘い込む。そんな作風で熱烈なファンを持つミステリー作家、麻耶雄嵩(まやゆたか)さんの新刊『友達以上探偵未満』(KADOKAWA)は故郷の三重県伊賀市を舞台にした連作だ。地元ゆかりの忍者や松尾芭蕉を絡めた物語は一見、ご当地小説のよう。だが、問題篇(へん)と解決篇にわかれた犯人当ては一筋縄ではいかない。

 伊賀ももと上野あおは、探偵志望の女子高生。中学時代から2人で学内外の事件を解決し、桃青(とうせい)コンビ(桃青は芭蕉の俳号)として活躍していた。ある日、所属する放送部の活動で、観光イベント「伊賀の里ミステリーツアー」を取材することに。ところが、クイズラリー形式のイベントのさなか、参加者の1人が他殺体で発見される。それも、芭蕉の俳句に見立てられたとも取れる格好で――。
 開巻を飾る「伊賀の里殺人事件」は、2014年にNHK・BSプレミアムで放送されたドラマ仕立ての推理番組「謎解きLIVE」で手がけた原案がもと。真実が一つしかない探偵小説では、最後に勝者となる探偵役は1人だけ。複数の探偵が登場する作品でも、本来の探偵役以外は誤った推理を披露する噛(か)ませ犬になりがちだ。でも、本作では「2人で探偵をさせたかった。それも従来のホームズ、ワトソンっていう一方的な依存関係じゃなくて、どっちがいなくても成り立たないように」。
 逆に言えば、1人では探偵として何かが足りないということ。探偵の役割をいかに分割するか、悩みながらの執筆だったという。「力の強さや足の速さと違い、頭の良さは何が苦手で何が得意かという長所短所を作りにくい。一つの事件で1人だけが目立つのではなく、両方とも活躍できるようにするにはどうしたらいいか」も考えた。
 本格ミステリーとしての謎解きの精密さはもちろん、こうしたミステリー小説の形式を揺さぶるような問いが仕掛けられているところが、麻耶作品の真骨頂だ。綾辻行人や法月綸太郎(のりづきりんたろう)らが輩出し、1980年代後半に「新本格」ブームの震源地になった京都大学推理小説研究会の出身。「初めて書いたのが犯人当てで、ミステリーマニアたちをどうやってうまくだますかが面白かった。その延長で、何とかそういう人たちの裏をかいてやろう、驚かしてやろうとして書いているところがある」
 その結果、数々の問題作も生まれてきた。日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞の2冠となった『隻眼の少女』(10年)では、名探偵の誕生をテーマにミステリー小説の根幹を揺るがした。『神様ゲーム』(05年)と続編『さよなら神様』(14年)には、序盤で犯人の名前だけを告げる自称・神様の小学生が登場。昨年、フジテレビの月9枠でドラマ化された『貴族探偵』(10年)では、推理から犯人の告発までをすべて使用人に任せる探偵を描いた。
 その前衛性は、「推理のために世界が歪(ゆが)む」と評されるほど。偏執的なまでに論理を突き詰めることで、現実とは違う、探偵小説のための世界が立ち上がってくる。
 たとえば、手間のかかる密室殺人は現実的ではないともいわれる。だが、「本格ミステリーは密室があったほうが面白い。だったら徹底的に密室が成り立つような世界にしてしまえばいい」。そして、こう続けた。「普通の社会のなかに密室があるから浮くのであって、密室が浮かないような社会というか、思考性になれば作品中では浮かなくなる。まあ、それだと作品が浮いちゃうんですけどね」
 (山崎聡)

友達以上探偵未満

著者:麻耶 雄嵩
出版社:KADOKAWA

表紙画像

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