なぜ、いつまでも憎しみの連鎖が止まないのだろう。なぜ、私たちは同じ過ちを繰り返してしまうのだろう。答えがどこにあるか、わかっているはずなのに。本書は、私たちの心の奥に流れている清らかな流れを、祈りのように静かな言葉で想起させる詩集である。
「追い求めると/楽しみには哀しみしか残らない/甘えると/苦しみはいつまでもうずく失うもののないこころには/喜びが流れこんでくる/怒りが閉ざす/こころを閉ざす/うぬぼれがしばる/こころをしばる おだやかにあれ こころよ/のびやかに しなやかに はれやかに」(「おだやかに」)
原典は釈迦の言葉といわれる仏教経典『ダンマパダ』である。日本には、『法句経』として伝わっている。著者は、トマス・バイロムによる英訳を底本にして、仏教経典『ダンマパダ』の哲学を美しい詩にした。著者は年を重ねるにつれて既成の宗教観を離れ、宗教的なるものを目に見えないイメージとして感じるようになったという。また、そのエネルギーは人間の言葉で自らを語ることがあるという。その言葉のひとつとして著者の心に響いたのが『ダンマパダ』である。
言葉は詩人によってさらに磨かれ、やさしい日本語として届けられた。目に見えないエネルギーは読む人の心に慈雨のように深く染み入るであろう。