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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>BOOK TIMES> 記事 〈著者に聞きました〉男たちの数寄の魂 井尻千男さん[掲載]2007年05月25日夕刊 ■「美」による歴史との和解 明治維新以降、日本人は二元論的な生き方を宿命づけられてきました。たとえば明治の元勲であった井上馨・世外は、欧化思想を唱えて近代日本を築いた一方で、私生活では純粋な和風建築に住み、日本美術を守護しました。三井物産を創立した益田孝・鈍翁や、「電力の鬼」といわれた松永安左衛門・耳庵にしても、時代の改革者でありながら、数寄者として日本の最良の美術を買い支えました。しかし、戦後は日本的な伝統文化が忘れ去られようとしています。私は、一国の文化はその国の富裕階層がどのように振る舞うかで決まると思っています。富裕階層が伝統的な美術工芸品を愛(め)でることで、芸術家や職人はより付加価値の高いものを目指し、それをまた富裕階層が評価することで文化の水準は高まります。そういうノブレス・オブリージュ(高貴なる義務)を放擲(ほうてき)してしまえば、日本文化は失われてしまう危機意識を感じています。 近代の数寄者たちがおもしろいのは、茶道具の価値に歴史的な物語を付加した点です。彼らが破壊した時代の大名たちが使った伝世品を愛でることで、歴史と和解したのだと私は考えています。また、歴史的な大傑作を所有し、それを後世に伝える中継者であり、自分の眼力で名品を再評価する美の整序者の役割を果たしました。彼らの生き方に関心を持ったことで、戦国武将たちがなぜ茶の湯に夢中になったのか、時代を遡(さかのぼ)りました。 信長の時代から明治の元勲や財界人に至る数寄者の系譜を辿(たど)ったこの本によって、現代に生きる人も日本文化に寄与する意識を持っていただければうれしく思います。(談) ここから広告です 広告終わり |
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