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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>BOOK TIMES> 記事 〈写真家に聞きました〉黒川能の里―庄内にいだかれて 大石芳野さん[掲載]2008年02月29日夕刊 ■500年受け継がれた黒川能の神秘 山形県の庄内地方に、黒川という小さな集落があります。月山や鳥海山にいだかれ、遠く朝日連峰を望むこの里で、500年間にわたって受け継がれてきた民俗芸能が「黒川能」です。庄内の海岸に荒波が打ち寄せ、黒川に雪が降りしきる2月1日未明、神社にお祀(まつ)りしている神を里に招く王祗祭が行われ、黒川能が奉納されます。この能は専門家によって伝えられたものではなく、ずっと里人たちによって継承されてきました。 黒川能には、自然の中に神を感じ、その神を敬う里人たちの念がこめられているように感じます。そこに惹(ひ)かれた私は10年間、黒川やその周辺の村落、庄内一円を歩き、出会った人々の暮らしの一端や、文化を育んだ風土を撮りためてきたのです。 当屋となった民家の座敷に設(しつら)えられた舞台で、夜通し繰り広げられる能や狂言。照明はほの暗い電灯と何本もの太い蝋燭(ろうそく)だけ。歴史ある能面や装束をつけた「農民」が粛々と舞う。まさに幽玄そのものの世界です。 文章を書いていただいた歌人の馬場あき子さんも、その魅力に惹かれ、35年間も通い続けておられます。馬場さんの豊富な知識と体験に基づいた味わい深い文章もご堪能ください。 黒川の里に通じる光景や習俗は、今も日本各地に残っているはず。この本の写真に読者の皆さんそれぞれの故郷を重ねていただけたら幸いです。 出版と併せ、品川のキヤノンギャラリーで写真展を開催しています。大きく引き伸ばされた写真から、黒川の里がもつ大いなるエネルギーを感じていただければと思っています。(談)
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