[掲載]2008年5月30日
■戦後の新聞をにぎわしたヘンな出来事
『へんないきもの』で話題を集めた著者が、また世界の隅っこに潜む面白いものに目をつけた。昭和20年代の新聞に載った、「スットコドッコイな事件」である。
空き巣に入った家でくつろぎ、そのまま寝入ってしまった泥棒なんて、まだまともな方。神社に盗みに入った泥棒が、「一足先に検挙された仲間が自供しませんように」と同じ神社で祈祷(きとう)中、挙動不審でつかまったなんていうマヌケな話が続々と登場する。また、昭和の人情をほうふつさせる事件もある。のど自慢ブーム真っただ中の昭和25年、全国コンクール出場予定の青年が窃盗の罪で留置場にいた。彼が身柄送検される前夜、刑事室で開かれたのが「芸能ご破算名残の演奏会」である。必要な楽器はなんと刑事の一人が探して、調達した。盗みに入られた女学生が、犯人の薄幸な浮浪少女に洋服をプレゼントしたなんて泣かせる話も載っている。この他、貴婦人が行きずりの少女の首実検をする江戸川乱歩の小説ばりのミステリーや、自称・神さまが働く悪事など、ヘンな事件の博覧会みたいな本である。
本書から見えてくるのは、混乱と貧困の戦後を生き抜いた庶民の実像。取るに足らない事件だけれども、だれもが必死だった世情が浮き彫りになって、少々切なくなる。
著者:早川いくを
出版社:バジリコ 価格:¥ 1,260
著者:早川 いくを
出版社:バジリコ 価格:¥ 1,575
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