[掲載]2008年5月30日
■7人の男女が紡ぐ希望と再生の物語
自らのホームレス体験を綴(つづ)ったベストセラー『ホームレス作家』から7年。著者の新作は、失業やいじめ、冤罪(えんざい)、家族の喪失といった、挫折や失意の底から人生を立て直す人々を描いた七つの短編集である。
第一話は、リストラされた音楽プロデューサーの物語。義父の会社で働くことを受け入れた彼が、ストリートミュージシャンの歌う歌になぜか惹(ひ)かれる。かつて売り出したバンドのメンバーを集め、再び音楽制作へ。彼が目指すのは単なる復帰ではなく、大きな意味でのリバイバルだった。第二話は、球団から契約打ち切りを告げられた若い野球選手の物語。自堕落に陥りかけた彼をすんでのところで思いとどまらせ、新しい一歩を踏み出すきっかけをつくったのは、第一話の登場人物である。第三話の主人公は中学一年生の少女。陰湿で執拗(しつよう)ないじめに苦しむ彼女の救いは、幼い頃に別れた顔も知らない父親。彼は、第二話で重要な役割を果たしている。
七編の中で主人公たちの人生が交差し、再生の物語が紡がれていく。主人公たちに共通しているのは、今の苦況を投げ出したりはしてないということ。彼らは苦しみ、屈辱を受けた果てに、自分の人生を受け入れることで道を開いていく。現実逃避や妥協ではなく、現実を見据え等身大の自分と向き合うことが希望への第一歩なのである。
著者:松井 計 (まつい けい)
出版社:世界文化社 価格:¥ 1,575
著者:松井 計
出版社:幻冬舎 価格:¥ 630
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