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幇間(たいこもち)は死なず [著]京須偕充

[掲載]2008年5月30日

■落語が教える空気の読み方

 落語は江戸時代の暮らしを面白おかしく語る話芸ではなく、いつの時代にも通用するリアルタイムな人間模様。そんなメッセージに貫かれたロングエッセーである。著者は、レコード会社のプロデューサーとして、数々の名人の録音を手がけてきた。豊富な知識と深い愛情で、落語の世界を縦横無尽にガイドする。

 本書のテーマは落語に学ぶ仕事術。数々の名作を引用しながら、コミュニケーションの大切さを説いている。たとえば、おなじみの『小言幸兵衛』という噺(はなし)を題材に、「幸兵衛が求めているのは、相手に対する気配りです。気配りといったって相手への遠慮や気兼ねではなく、相手への、その立場への尊重の気持ちです」と主張する。圧巻は大作『百年目』から学ぶ職場の人間関係の機微。大店(おおだな)の旦那(だんな)と番頭が繰り広げる心理的な攻防戦を、現代の職場に引き付けて読ませる。また、幇間(たいこもち)といえばお調子者の代表として描かれることが多いが、本物の幇間(ほうかん)は一流人の聞き役となる見識を持ち、客が大いに満足して遊べる時間と空間をプロデュースしたという。誰もが持っている幇間性に目を向け、再評価したいというのが著者の願いである。粋な気配りは、今の時代こそ必要ではあるまいか。

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