[掲載]2008年5月30日
■話題の新人、初の恋愛小説集
著者は市川拓司や石田衣良などとともに恋愛アンソロジー『I LOVE YOU』に参加。本書のタイトルにもなっている『百瀬、こっちを向いて。』で話題を呼んだ新人作家である。その中田永一の初めての恋愛小説集がついに刊行された。
注目の『百瀬……』は先輩の浮気のカムフラージュのつもりでつきあっていた彼女にいつのまにかひかれていく高校生が主人公。『なみうちぎわ』は水難事故が原因で5年間の眠りについていた21歳の姫子と、彼女が高校1年の時にアルバイトで勉強を教えていた少年・小太郎の物語である。また、『キャベツ畑に彼の声』は女子高生と高校教師が、そして『小梅が通る』では地味で目立たない女子高生と元気だけが取り柄の同級生が、さわやかでせつないラブストーリーを繰り広げる。
どの作品も明るく軽いタッチで描かれているが、それでいてほんのりと切ない余韻が残る。また、実はそれぞれのストーリーには巧みに謎が隠されている。読者は恋のゆくえを追ってページを繰っていくが、読み終わった瞬間、あちこちに張られていた伏線に気づくはずだ。そういった意味で本書はハートウオーミングなミステリー小説ともいえよう。
恋愛小説は苦手という人にもミステリーファンにも、そして、あえて中高年にもおすすめしたい一冊。時には、ほのぼのとした青春の1ページを思い出すのも悪くないだろう。
著者:中田 永一
出版社:祥伝社 価格:¥ 1,470
著者:伊坂 幸太郎・石田 衣良・市川 拓司・中田 永一・中村 航・本多 孝好
出版社:祥伝社 価格:¥ 630
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