[掲載]2008年5月30日

■老舗(しにせ)「食べもの屋」から見た昭和史
人々にとって最も身近な商売として「食べもの屋」がある。本書で取り上げられた30業種30店舗、どれもなじみ深い食べものばかりだ。天ぷら、そば、うなぎと続き、甘味、すしがあって、川魚料理、ふぐ料理、さらにカレー、ロシア料理と広がっていく。いずれの店も半世紀以上にわたって営んできた老舗なのである。著者は、それぞれの店の主人に、店の来歴から語り起こしてもらい、主人が体験した修業、食材、調理法などなど、まさに「食べもの屋」のすべてを聞いていく。
東京の焼鳥屋「つるや」は昭和12年創業。当時、鶏肉が高価だったため、安い合鴨(あいがも)を専門にしたという。昨年惜しまれつつ閉店したようだが、名物の合鴨や皮いため、スープ煮は最後まで多くの常連に愛された。また、鳥料理の「玉ひで」は、明治時代半ばに親子丼を創案する。しゃも鍋の残り汁を卵とともにご飯にかけて食べるのをヒントにした。長いこと出前限定だったのが、店でも出すようになったのが昭和54年だという。本書で語られているのは、見事なまでに「食の昭和史」なのだ。
なお、本書は雑誌「月刊食堂」(1989〜91)に連載されたものだが、これらの話を裏付けてくれる貴重な写真がいくつも載っている。主人たちのその一徹な職人の顔つきもまた、「昭和」の残影と思えてならない。
著者:岩崎 信也
出版社:柴田書店 価格:¥ 1,575
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