[掲載]2008年6月27日夕刊
■内側から見つめた中国の実像
北京オリンピックを目前に控え、中国に関する単行本やテレビ報道が目白押しである。その多くが、日本から見た中国、日本人が解釈する中国人について述べたものだ。どうにも隔靴掻痒(かつかそうよう)の感が強かったのだが、それは、本書のような内側からの視線がまったく存在しないせいである。
本書は、中国の新聞「人民日報」に掲載された60編の記事で構成されている。日中問題、都市と農村、環境問題などなど、テーマ別に15の章に分けられている。これが、実に読ませる。プロパガンダでもなければ、一方的な日本批判でもない。たとえば、日本のODAに対する感謝の記事、中国の農村でボランティアに励む日本の若者の話、あるいは中国における賃金格差の実態、コピー商品氾濫(はんらん)への警鐘と、なかなかにバランスがとれている。一方で、学校でのフォークダンスの流行、芸大受験ブーム、謝罪代行業の紹介と、中国の「今」もきっちり切り取られているのだ。60編の記事一つひとつに、監訳者による寸評がついているのも、日本人の理解には役立つ。北京の街角で、椅子(いす)一つだけで床屋を商うおばあさんの話もあるが、こうしたささやかな労働はかつての日本でも見られたものだ。そして、いま中国からも消え去ろうとしていることが分かるのである。
出版社:日本僑報社 価格:¥ 1,995