[掲載]2008年12月24日朝刊
■1匹の柴(しば)犬が生きる希望をもたらした
ドッグセラピーとは、治療を目的として、医療や福祉の専門職が、訓練を受けた犬と協力して行う動物介在療法のことである。著者は医療・福祉施設を営む医師で、6年半前、日本で初めて本格的なドッグセラピーに取り組んだ。本書はその心温まる記録であり、今後の動物セラピーへの貴重な資料ともなっている。
本書の主人公は、アメリカ生まれのセラピードッグ、柴犬のジャスティンだ。気弱で臆病(おくびょう)な性格だが、弱った人を見極める力がある。ジャスティンに寄り添われるうち、指が少しずつ動くようになった慢性関節リウマチの女性。脳梗塞(こうそく)を患った男性も、一生動かないといわれていた左腕が動くようになった。ほとんど寝たきりだった認知症の女性は、ジャスティンと過ごす穏やかな日々の中で、一時は自力でトイレに行けるまでに回復した。
もちろん、著しい成果が得られる症例ばかりではない。しかし、著者の運営する施設では、ジャスティンらセラピードッグが介在することで、自ら「元気になりたい」と変わっていった人は少なくない。著者自身、リハビリが必要になったり認知症になったときは、ジャスティンのような「名医」がほしいときっぱり言う。スタッフとの試行錯誤の日々、そして犬と対象者との心温まるやりとりが生き生きとつづられる、感動のノンフィクションである。
著者:生長 豊健
出版社:講談社 価格:¥ 1,575
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