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[掲載]週刊朝日2006年7月21日号[評者]温水ゆかり
帯に「大人の思考法を伝授」とあって、これをエッセイと言ってしまうと軽すぎる。随想録かな、と思って辞書を引くと——。わ、驚いた。『随想録』を書いたモンテーニュは折々の関心ある話題について哲学的私見を書いた。彼はゆるやかな懐疑主義が人生を幸福にするとして、知識の蓄積より判断力に重きをおいたというようなことが書いてある。なんだ、本書の的確な要約になってるじゃないか。いやはや「ウチダさんは現代のモンテーニュだった」で、この原稿は終わっていいかも。
「大人の思考法」「大人の作法」「大人の常識」など全4章。話題はそれこそ折々で、セクハラ、在日、ネオコン、愛国心、憲法改正まで、個人的には「よくぞ言ってくださった」の感あり。しかし不満のはけ口としての書ではない。全体を貫くのは、宛先不明の正論を吐くより、宛先のあるメッセージを発信しようという提案(処方箋)だ。確かに庶民と嫉妬を結びつけるなど、最近の論調には郵便屋さんの機能がない。ほかにも「目からウロコの愛の心得」(笑う)、「友達であり続ける秘訣」(卓抜の分析)などは生活知として身につけたい大人の作法。親本は03年刊。文章(視点)は少しも古びていない。
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