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愛でたい文庫

食べる女 [著]筒井ともみ

[掲載]週刊朝日2007年03月23日増大号
[評者]温水ゆかり

 女性が主人公の15編に、「食べる男」の3編を加えた計18編。親本は04年刊。

 若い恋人が毎晩美味しいものを作ってくれるという幸運を享受している女性が、立ったままシャバシャバと玉子かけご飯をかき込む「台所の暗がりで」、運転免許試験場で会った冴えない中年男性タナベさんの料理の腕に、身も心も絡めとられていく艶笑小咄のような「闖入者」、3度の食事をコンビニで賄う女性の元に正体不明の石が届き、彼女にふる里の森の匂いを思い出させる「賜物」。グルメ小説ではなく、脚本家らしいシーンの積み重ねの中から、各主人公が生の感覚を回復していく物語になっているのがいい。

 食の光景といえば、炎天下、若者の路上でのコンビニ弁当座り食いを見たときの衝撃は忘れられない。夜の電車の中でチクワを齧る若い女性を見かけたこともある。みんな無表情。この10年の労働強化で、食の風景も確実に変質した。

 著者は巻頭に「スローフード・スローセックス宣言」を掲げ「ひとはおいしい食事をすると、体が元気になる。いとしいセックスをすると、心がやさしくなる」と言う。その心意気やよし。荒廃した食のシーンに水を落とす、大人の食育寓話集にもなっている。

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