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愛でたい文庫

新教養主義宣言 [著]山形浩生

[掲載]週刊朝日2007年05月18日号
[評者]温水ゆかり

 数学本は一定の部数が見込めると聞いたことがある。過去の無念を晴らす“トラウマ癒し本”になるとか。教養にも同じことが言えそう。「旧」教養に縁なき衆生だったため、一丁「新」でも、と思わず購入。親本は99年。

 しかし、下心の浅ましさを突かれた。新教養の見取り図に案内する本ではない。巻頭の「心ときめくミームたちを求めて」を読むと、著者は現代の知のあり方に苛立っている。例えばミトコンドリアを知らしめた『パラサイト・イヴ』、禅を解説して鈴木大拙以上の『鉄鼠の檻』。これらを串刺しにする=「うじゃうじゃとつなげていくこと」が教養だとし、著者がこれまで書いてきた文章の再録でこれを実証するのだ。会員限定。呼ばれてもいない集まりにノコノコ出かけたようなバツの悪さ。それでも面白く読めるのは、日本のホールデン君(『ライ麦畑でつかまえて』)みたいな口調が、なかなかチャーミングだからだ。ホ君にあった“揺らぎ”は皆無だけれど。

 例えば田中康夫も同じ発想の書き手だと思うが、彼のベースは一応洗練を志向(試行?)した70年代的因子。著者の因子はおどけと威張りの80年代因子。最近80年代的感性、復活してます。

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