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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>愛でたい文庫> 記事 愛でたい文庫 植物一日一題 [著]牧野富太郎[掲載]週刊朝日2008年03月14日号 ■ほとばしる“草の精”の激情 独学から出発した人の矜持ここにあり。84歳の咆哮に、笑い声をたててしまう。 江戸末期、高知に生まれた牧野富太郎(1862〜1957)。小学校を2年で中退、実家の財産や待合を経営した妻の稼ぎまで食い潰し、日本植物学(分類学)の巨人となった。この個性迸るエッセイは、敗戦翌年の執筆。 5歳下の漱石と同じく漢籍に明るく、牧野の咆哮は特に“日本特産の植物を中国名(漢字)で呼ぶな、和名(カナ)で書け、モノが違う”と、名と実の食い違いを突く「名実考」で音量を増す。アジサイを紫陽花と書く俳人や歌人に猛省を促し、昆布は「ワカメであるゾヨ!」と「四方を睥睨」して通達、孟宗竹の漢名を執念で突き止め、インゲンマメの項では、隠元禅師が“俺に無関係の豆まで隠元とは何事ぞ”と、草葉の蔭で怒るさまを講談調で活写する。 ナガイモと自然薯(ヤマノイモ)で吠えた後のオチの付け方がキュート。妻を亡くした牧野博士の滋養にと、ヤマノイモを送ってきた人がいた。で、一首。「精力のやりばに困る独り者、亡き妻恋しけふの我が身は」。自分を“草の精”と称した方は、晩年まで草いきれの中。純情の迸りにもアテられるのです。
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