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愛でたい文庫

未来の息子 [著]椰月美智子

[掲載]週刊朝日2008年04月18日号
[評者]温水ゆかり

■“荒み”から“エロス”への道程

 児童文学と一般の小説の相関関係についてちょっと。直木賞作家で言えば、角田光代さんのように文学でデビューし、児童文学の受賞歴もあるというのが通例だった。が、最近は森絵都さんのように児童文学で名を成し、文学に移行する例が多い。しかし今後は“行ったり来たり”という手もありそうだ。椰月美智子さんの著作は今のところ3冊(+アンソロジー)。1作目と3作目で児童文学賞を受賞、二作目のこの短編集には思いがけず生々しい1編もある。

 計5編。表題作と「月島さんちのフミちゃん」は児童文学風味。前者は中2の女の子の元に未来から親指大の息子(といってもオヤジ)がやってきて、繁茂した家族の系統樹を見せるファンタジー。

 働く主婦の過食と秘かな性的愉楽を描く「女」が面白い。著者は1970年生まれ、30代の女性作家がものする結婚小説にはある種の“荒み”があって、40代前半では“断念”、40代後半では“エロス”になっていくというのが個人的な見立て。つまり荒んでいるほど秀作なのだ。

 5編に共通するのは“過剰と欠損”。ソーメンを茹でている間に恋人たちの関係が軋んでいく「告白」も捨てがたい。エロスの萌芽を感じる。

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