[掲載]週刊朝日2008年5月23日号
■愛すべき若桑節、炸裂!
昨秋突然逝った著者の渾身の作。大佛次郎賞を受賞した。
天正10(1582)年、信長の時代にローマを目指した4少年こと「天正少年使節」。旅の様子を再現すると同時に、当時の東西世界の実相と時代精神を複眼で叙述する。
しかし、これほど大きな構えの本だったとは。ヘトヘトになる。何しろ少年達の出発は上巻も終わりのほう。だが、ものすごく楽しい。愛する若桑節が随所で炸裂する。途中で「すみません。余計なことでした」と謝ったり、大学教師として「教育とは明日へ向けての『浪費』だ」とぶち上げたり。秀吉の“女狩り”に遭った娘達の無念を想い、「英雄色を好む」で秀吉の行為を括ることは、「男根中心主義である男性の歴史家のやること」とフェミ柱が立つ。
著者は敗戦後、美術を学ぶ留学生として船でイタリアに渡った。8年5カ月後帰朝した少年達の苦渋と苦難は自分のものでもあったと冒頭に書き、それを受けるのは下巻の最終章。こうだ。西洋文明に接した日本の知識人の態度は2つある。全力で踏ん張るか、第1人者になれる日本に回帰するか。しかし第3の道はある。「西と東に橋を架けること」。まさに本書。遺言の書であったことに頭を垂れたい。
著者:若桑 みどり
出版社:集英社 価格:¥ 980
著者:若桑 みどり
出版社:集英社 価格:¥ 900
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