[掲載]週刊朝日2008年11月21日号
■坊っちゃんは公務員になった?
題名を見て迷わず購入。鉄子じゃないんですが、昔から『坊っちゃん』が「街鉄の技手」に転職したというのが不思議で。だって唐突じゃないですか。ナンパな文化系の話に、いきなり理科系ネタを放り出したみたいなラストで。
著者の小池先生がおっしゃるには、坊っちゃんの出た物理学校とは今の東京理科大の前身、ストレートで卒業した坊っちゃんはたいした理科系才能の持ち主とか。また「技手」というのは、現場で監督命令する職能。街鉄は三年営業しただけで、後に公営化されたから、坊っちゃんは東京市役所の公務員になったはずというオチもおかしい。
この表題エッセイほか、文学に登場する鉄道を取り上げて計八編。田山花袋が『蒲団』に先立って発表した「少女病」を最初の通勤電車文学の傑作(あるいはストーカー小説)と位置付けたり、佐藤春夫著『田園の憂鬱』の幻聴(汽車の音)には実体があったと反証したり、いやはや鉄分の多い文学がこんなに面白かったとは。芥川龍之介(「蜜柑」)も永井荷風(『日和下駄』『ボク(さんずいに墨)東綺譚』)も、とんだ食わせ者。宮沢賢治論である「銀河鉄道は軽便鉄道であったのか」の“勾配のある鉄道史”にもグッとくる。
著者:小池 滋
出版社:新潮社 価格:¥ 420
著者:夏目 漱石
出版社:新潮社 価格:¥ 300
出版社:筑摩書房 価格:¥ 2,520
著者:佐藤 春夫
出版社:新潮社 価格:¥ 380
著者:芥川 龍之介
出版社:筑摩書房 価格:¥ 1,260
著者:永井 荷風
出版社:講談社 価格:¥ 1,029
著者:永井 荷風
出版社:岩波書店 価格:¥ 483