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昭和天皇の妹君―謎につつまれた悲劇の皇女 [著]河原敏明

[掲載]週刊朝日2009年11月20日号

  • [評者]温水ゆかり

■すさまじき取材 “皇女が尼さんに”説

 大正天皇は男系(だけ)に恵まれた。後の昭和天皇、秩父宮、高松宮、三笠宮の四親王。が、皇女がいたという。三笠宮が男女の双子だったという説だ。その真偽を追いかけた執念のノンフィクション。

 きっかけは明治天皇のご落胤との噂の実業家から“三笠宮さまには妹さんがいて、奈良で尼さんをしている(円照寺の山本静山尼)”と聞いたことだった。多胎は畜生腹、特に男女の双子は情死者の生まれ代わりという俗信があった戦前。巫易占卜に凝り、“「ウルトラ」がつくほど古い体質”だった皇后を鑑みるに、あり得ないことではないと著者の「物書きの業」に火が付く。

 すさまじきはその取材ぶり。女官、侍従、元皇族など関係者100人近くの証言を集め、静山尼へのインタビューなどはまさに紳士版突撃取材。最後に噂を確信するに至ったデータを38項目に整理している。判断は読者それぞれだが、皇后との関係が母娘の情愛を想わせて印象に深い。個人的な瑣事を一つ。スコットランドの最北のホテルで「裕仁」のサインを見たことがある。可能性は大正10年、皇太子時代の初洋行。が、旅程の記録にはない。記録に残さないものは結構ありそうだ。にしても、本書は特大級ですが――。

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