[評者]温水ゆかり
[掲載]週刊朝日2010年12月3日号
■刑務所の笑いは“オネエ達”が提供
以前ご紹介した『累犯障害者』(山本譲司著)。本書はその追随書。著者(元大手広告代理店勤務)は山本氏の著作を読み、刑務所に行くなら同じような体験をしようと思い、認知症の高齢者、身体障害者、知的障害者などの世話をした。出所後、執筆&コメント活動を始めた著者の2作目、文庫書き下ろし作である。
本来、医療刑務所に入るべき人達が集められた黒羽・第16工場。刑務所では私語禁止だが、ここでは刑務官も見て見ぬふり。お漏らししたり自分の名前が分からなかったり、周囲の声掛けがないと回っていかないからだ。が、それ以上にここを賑やかにしているのはオネエ達の存在。恋愛沙汰を起こさないようここに“隔離”されているのだが、叱り上手だったり、入浴時の高齢者の衣服の着脱を手伝ったり、天性の明るさと気配り上手で場に笑いを提供しているのだ。本書の大目的ではないこの「オカマの章」がめっぽう楽しい。ニセチチだから揉んでもいいと思う勘違い男や、思わず押し倒す不届き者がいるのは娑婆の縮図か。
刑務所内高齢者人口が今よりもっと増えるのは目に見えている。国は一体どうする気なのだろう。ムショでオムツ。唱えてみると身が引き締まる。
著者:本間 龍
出版社:宝島社 価格:¥ 480
著者:山本 譲司
出版社:新潮社 価格:¥ 500