■恥ずべき? 便利な生活
「格差社会先進国」であるアメリカのワーキング・プア(働く貧困層)の実態を本書は生々しく描写している。原書はアメリカで100万部を超すベストセラーとなった。ジャーナリストである著者は、ウェイトレス、清掃作業員、ウォルマート店員など時給7ドル前後の過酷な低賃金労働者の暮らしを実体験する。
1999〜2000年のアメリカはITバブルに沸いていた。しかし低賃金労働の時給はほとんど上昇しない現実に、著者は愕然(がくぜん)とする。企業は彼らの賃金を「持てる力を総動員して」抑制していたという。一方で、住宅価格高騰に伴う家賃上昇が彼らの住環境を劣悪にしていた。
著者は終章で、グリーンスパンFRB前議長が「賃金インフレ」の問題はなさそうだと議会で「嬉々(きき)として」報告していた点を皮肉っている。中央銀行の使命は長期的な物価の安定にあり、貧困対策などの所得再配分は管轄外だ。経済学的にはそれが正しいが、しかし、低所得者層にそのままでいろと言っているように聞こえるグリーンスパンの証言に著者は納得がいかないのだろう。
便利な生活が低賃金労働の存在に依存しているならば、「私たちが持つべき正しい感情は、恥だ」と著者は主張している。ウォルマートは今月7日、1200店舗で新入社員の賃金を6%引き上げると発表したが、恐らく本書の批判も影響したのではないか。