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ビジネス書

亜玖夢博士の経済入門 [著]橘玲

[掲載]2008年01月20日
[評者]清野由美(ジャーナリスト)

■理論も学べる破天荒な物語

 4頭身の頭部、さらにその半分が額で、白髪を伸ばした異形のシルエット。それが歌舞伎町風俗街の雑居ビルに研究所を構える亜玖夢(あくむ)博士だ。「相談無料。地獄を見たら亜玖夢へ」というチラシに誘われて来るのは、学生ローンで首が回らなくなった若者、闇社会の商売で崖(がけ)っぷちにたたずむ極道、“奇跡の水”販売にいそしむ男ら、資本主義社会の漂流者たち。多重債務、利権抗争など、彼らが陥ったドツボから、カーネマンの行動経済学、ノイマンのゲーム理論といった、先端の経済理論が学べる、というサービス精神にあふれたビジネス書もしくは小説だ。

 構成は1話1理論で5編。たとえばマルチ商法の当事者、満留知羽丸(まるちはまる)は「南極のペンギンに氷を売る」と豪語する男。座右の銘は「他人よりすこしでも早く始めること。誰も開拓していない市場を探すこと。ピラミッドの頂点を目指すこと」と、どこかのビジネス書で聞いたような言葉。そんな人間が破滅に向かう姿を見ても、亜玖夢博士は救いの手を差し伸べたりはしない。彼はただ「症例」を観察し、興味のおもむくまま「劇薬」を投じ、事態の推移から「チャルディーニの社会心理学」を確認するだけ。「劇薬」として登場する少女マンガキャラの美少年や、あやしい中華料理店主らが、かきまわす物語には破天荒な面白さが満点で、同時に、うさんくさい「経済」に対する著者の鋭い洞察も味わえる。

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