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ビジネス書

その数学が戦略を決める [著]イアン・エアーズ

[掲載]2008年02月03日
[評者]梶山寿子(ジャーナリスト)

■絶対計算には勝てない?

 誰だって未来には興味がある。人気占師よりも正確に将来を予言してくれそうなのが、兆単位の大量データを解析する「絶対計算」だ。

 90年代初頭、降雨量や気温をもとにワインの品質を予測する数式の是非が米国で話題になった。NY在住だった評者は当時の騒動を記憶しているが、技術革新によってさらにとんでもない事態が起こっているらしい。相性最高のパートナーを見つけたり、有望な野球選手を発掘するのは序の口。クレジットカードの返済実績から自動車事故を起こす確率、購入履歴から5年以内の離婚率をはじき出すなど、一見関係のない要素の相関に着目することで意外な情報も得られる。広範な個人情報が掌握されていることに戦慄(せんりつ)を覚える。

 エール大学教授である著者は、データ分析によって政策や裁判に影響を与える「絶対計算者」。絶対計算の台頭とその課題を、豊富な事例を用いてわかりやすく説き明かす。

 データに照らして治療法を決める「根拠に基づく医療(EBM)」への医師の根強い抵抗をはじめ、「専門家の直感」対「絶対計算」の戦いは不可避だが、人間に勝ち目はないという。効果的な教育法の開発、脚本の内容だけで映画の興行収入を予測する方程式など、興味深い具体例に引き込まれる。惜しむらくは日本語版のタイトルを編集者の直感で決めたこと。原書のように絶対計算を駆使して選んでほしかった。

    ◇

 山形浩生訳

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