「涼宮(すずみや)ハルヒ」の勢いが止まらない。といっても、だれそれ? と思う人が多いはず。
小説『涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)』(谷川流(ながる)著、角川スニーカー文庫)の勝ち気なヒロイン。高校入学時のあいさつは「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」。SOS団(世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団)なるクラブを作り、手前勝手な企画を立てては、周囲を巻き込むドタバタ劇を繰り広げる。
少年少女向け小説で、03年6月の発売から今年3月まで7巻累計130万部。この春からのテレビアニメ放映で人気に拍車がかかり、半年足らずで累計280万部に達した。放映終了後も、2話ずつを収めたDVD(1巻を除く)が順次発売中で、各巻約4万枚ずつ売れている(オリコン調べ)。
ヒットの理由を、角川書店第二編集部の坂本浩一さんは「どこからでも入れる間口の広さ」と話す。SF的設定やミステリー的状況が混じり合った物語が、哲学的、人生訓的ぼやきだらけの語り部役男子「キョン」の一人称で語られる。
ハルヒを筆頭に、SOS団メンバーの「キャラ立ち」ぶりもすごい。無表情で、分厚いSFの原書などを読んでいる元「眼鏡っ子」。部室に古今東西のボードゲームを持ち込みキョンに負け続けるニヒルな二枚目。そしてハルヒから、メード服などの「制服」を強制的に着せられる童顔豊乳の上級生といった案配。
SFやミステリーという衒学(げんがく)的要素にキャラクターの萌(も)え要素、そして、だれもが一度は通過した青春。いまどきの人気のツボを抑えまくった物語作りには、「王道感」が漂う。キョンの口調をまねて、「学生時代のオレなら食い付くだろうさ」と言いそうになる代物だ。