長く品切れになっていた大岡昇平の小説『愛について』(講談社文芸文庫)が、熱心な書店員によって復刊された。限定商品としての発売が静かな人気を呼んでいる。
東京の啓文堂書店高幡店の志水雅弘店長(33)にとって、この小説は、高校時代に読みこんだ思い出の一冊。何とか自分で売ってみたいと講談社にかけあったところ、「700冊からならば可能かもしれません」。1書店で売るには多すぎる数だが、残ったら定年までに売り切る覚悟で今年3月、重版してもらった。
60面積みという大展開で、「啓文堂限定復刊」として大々的に売り出したところ、もともと多かった年配客を中心に好調な売れ行きを示し、啓文堂の他店舗からも「売りたい」と手があがった。
700部はほぼ売り切り、講談社ではさらに600部の増刷を決定。この増刷分からは、他の書店からの注文にも応じることになった。1冊の本の寿命が短くなるなか、書店限定という例のない形での「復刊」の成功は、他の書店からも注目されている。