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フランツ・カフカ賞の授賞式に臨む村上春樹さん=プラハで、AP
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フランツ・カフカ(1883〜1924)
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第6回フランツ・カフカ賞(フランツ・カフカ協会主催)を受賞した作家村上春樹さん(57)が10月30日、プラハ市で開かれた贈呈式や会見に出席した。公の場に出ることが少なく、「本当に現れるのか?」と関係者の気をもませたが、現地では「もっとも好きな作家のひとり」というカフカへの思いを率直に語った。
贈呈式に先立ち、地元出版社の主催で、記者会見が開かれた。チェコでは『海辺のカフカ』が出版されたばかり。会見場所となったホテルの一室は50人以上の地元メディアが詰めかける関心の高さで、プラハを初めて訪れた村上さんを驚かせた。
「『海辺のカフカ』では15歳の少年を書きたかった。僕が初めてカフカを読んだのが15の時だったから、主人公にカフカという名前をつけた。その意味で、この本はカフカへのオマージュといえます」
なぜ主人公の名が「カフカ」なのか、と問われての答えだ。カフカ少年は15歳にして「変身」「審判」「城」に加えて「流刑地にて」も読んでいるという設定だが、これは村上少年の実体験が下敷きになっていたわけだ。「城」を読んで衝撃を受けて以来、村上さんはカフカのほとんどの作品をくりかえし読み、ドストエフスキーと並んで大きな影響を受けてきたという。
日本の15歳の少年が、カフカの背景にあるヨーロッパ文化を理解できたのか、文化的な違いを感じたかという質問が出た。「カフカ作品にはユニバーサルな価値がある。僕が15歳で最初に『城』を読んだとき、中央ヨーロッパの文化が背景にあるなんてことは理解してなかったけど、ただこの本は自分のためにある、と感じました。これで答えになってますか?」
カフカに関する質問が集中したが、村上作品のパラレルワールドについてや、「野球を見ながら小説のアイデアが浮かぶんですか」といったマニアックな質問も。
「なぜ作品(『海辺のカフカ』)にアイヒマンを登場させたのですか」「『ノルウェイの森』に、なぜ自殺する人がたくさん出てくるのか」。即答するのが難しそうな問いにも、言葉を選んで丁寧に答えていく。
事前に伝えられていたメディア嫌いのイメージと、会見での誠実な受け答えに地元の報道陣はギャップを感じていたようだった。とはいえ当日も、会見場にテレビカメラを入れるかどうか、日本のメディアを入れるかで、直前までもめたのだが。
記者に会うことが好きじゃないそうですがと聞かれ、「今日が人生初めての記者会見で、こんなに大勢来るなんて。もう二度とやらないかも」と笑わせたあとで、「小説を書くのが僕の仕事で人前で話すことではない。普通にバスや地下鉄で東京の町を動き回りたいし、映像が出て大勢の人に認識されたくないんです」と説明した。
村上さんを幾重にも取り囲む報道陣。今年で6回目の新しい賞がなぜ短期間に高い知名度を得るようになったのだろうか。
フランツ・カフカ賞など協会の活動を実際に運営するフランツ・カフカセンターのディレクター、マルケータ・マリショバーさんは、こう説明する。
「10人の委員が質の高い選考をしているから。委員それぞれが候補者を出して、12、13人にしぼりこんでいく。一昨年のイェリネクの時は、なぜイェリネクだと批判されたりしたけど、その年のノーベル文学賞に選ばれて、私たちの正しさが証明されました」
昨年の受賞者ピンターも、続いてノーベル文学賞を受けたことで、一気に注目を集めるようになったのだ。
だから、会見では日本人記者からこんな質問が出た。
「カフカ賞の受賞者はノーベル賞の候補とも言われますがどう思われますか」
村上さんは、やれやれ、といった感じでこう答えた。
「ノーベル賞については誰からも何も言われてないし実際、何の賞にも興味ないんです。僕の読者が、僕の賞です。カフカを尊敬しているから賞をもらいにきたので、ノーベル賞をねらってなんてことはないですよ」