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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>ひと・流行・話題> 記事 ひと・流行・話題 肖像画問題から1年、「コーラン」現代デンマーク語訳の上梓2007年02月07日 ムハンマド肖像画問題が世界中で取り沙汰(ざた)されてから一年が経(た)つ。イスラム教の聖者ムハンマドをテロリストになぞらえたイラストを掲載したデンマークの新聞が、「言論の自由」を楯(たて)に自己弁護を試みたのに対し、イスラム社会は「聖者ムハンマドを冒涜(ぼうとく)された、信仰を踏みにじられた」と主張して、世界の各地で強烈な反応を示した。 デンマーク国内でも激しい論議がわき起こり、政治問題にまで発展したが、その過程で、イスラム社会を風刺する側も信者の側も、どちらもイスラム教について不十分な知識しか持っていないことが露呈した。国民の大半は先入観に満ちたイスラムのイメージだけを基盤にして発言し、イスラム社会を構成する移民の側も、説教を聞き要点を学んで祈りを毎日繰り返していながらも、聖典『コーラン』を読んだことのある者は、少数の識者とオーソドックスな信者に限られることが判明した。 もともと秘密のベールに包まれ、時代とともに数々の解釈がなされてきている『コーラン』。その原典をアラビア語で読みこなせる者はほとんどなく、ましてや移民の第三世代となると、日常のアラビア語でさえおぼつかない。こうした状況のもとに、昨秋、現代デンマーク語訳『コーラン』が上梓(じょうし)された。 それまでにもデンマーク語に翻訳された『コーラン』が一冊あったが、それはセクト主義の偏見に染まっていた。今回の新訳は、イスラム教徒ではない学者が、教典としてではなく、アラビア語はもとよりアラビア文化すべての原点に位置するテキストとしての『コーラン』を、いわば神聖な言葉の芸術、文学として読めるように訳出したもので、大きな波紋を引き起こしている。 装丁にアラビア文字をいっさい使わず、金文字も入れず、手に取りやすく、しかも読みやすくて読んでわかる文章に直された新訳『コーラン』には、詳しい索引までつけられていて、検索が容易になっている。ムハンマドの言葉の断片が寄せ集められて編集された『コーラン』は反復が多く、年代順の配列になっていないので、索引が役に立つ。聖典と後代の解釈の相違もわかる。 「アラー」はアラビア語で神の意だが、神の名前でもある。新訳はそれをあえて「神」と訳すことでイスラム教の唯一神の輪郭をぼかし、キリスト教信者の理解を助けている。まさにその点が批判の対象になっているのだが、高見にあった『コーラン』を地におろし、だれにでも読めるようにしたことの意義は計り知れない。
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