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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>ひと・流行・話題> 記事 ひと・流行・話題 ポピュラー音楽の論考 盛んに2007年07月05日 ポピュラー音楽を対象とした研究書が近年、次々と刊行されている。といっても楽譜を細かく分析したり、アーティストの生涯をくわしく追ったりするわけではない。聴き手や著作権、メディアといった音楽をめぐる環境に焦点を当てた論考が目立っている。
学校や異世代間の集まりなど場所や状況に応じ、服を着替えるかのように「好きな音楽」を変える……。 『音楽をまとう若者』(小泉恭子著、勁草書房)は高校生の音楽消費の実態をフィールドワークで浮かび上がらせる。調査で明らかになった「真に好きな音楽は隠す」心性から、若者の人間関係作りにまで考察は及ぶ。 70年代半ばのロックンロール・リバイバルのなかで生まれた「ローラー族」を取り上げるのは大山昌彦著「若者下位文化におけるポピュラー音楽の消費・再生産・変容」(音楽之友社、三井徹監修『ポピュラー音楽とアカデミズム』所収)だ。とっくに流行が終わったと思われたローラー族のふるまいが90年代後半になっても茨城県の一部で継承されている様子を丁寧に説き起こす。 二つの論考に共通するのは「受け手」への視線だ。 「いまのポピュラー音楽研究には作り手や、楽譜などの“テキスト”を特権化するのをやめようという意識がある」と話すのは増田聡・大阪市立大大学院専任講師。彼もまた近著『聴衆をつくる』(青土社)で、好き嫌いで語られがちな音楽への言説を、一から見直している。 クラシックを中心とした音楽学や音楽史の影響からか、ポピュラー音楽もまたアーティストや楽曲を「聖典」化するきらいがある。ところが、「21世紀になり、新しいと感じさせるような音楽があまり出てこない。歴史が動かない印象の一方、音楽をめぐる環境は激変している。従来通りのスター偏重では、ポピュラー音楽をとらえきれないのではないか」と増田さん。 激変の一例は01年に発売されたiPodだろう。ネット配信などで入手した音源を大量に保存して聴くスタイルは、従来のCDなどのパッケージ中心の音楽視聴を変えつつある。 アーティストとは異なる「作り手」に注目した論考もある。『ポピュラー音楽は誰が作るのか』(生明俊雄著、勁草書房)は、レコード会社など仲介者の役割の変遷を、レコード産業興隆期からひもといている。 語り口を増やすポピュラー音楽研究の背景には大学の変化もある。日本ポピュラー音楽学会の設立が90年。90年代半ばから各地に学際系大学院が生まれ、漫画なども含め、従来の研究領域でなかった文化事象が研究に取り込まれ始めた。その成果が10年近くたって実を結んでいるようだ。 「欧米の重要な論考の邦訳も充実してきた。そのなかで音楽はポップカルチャー、デジタル文化の重要な要素としてとらえられている」と増田さん。ポピュラー音楽研究は、「音」のみならず「大衆」を見つめる窓にもなりつつある。
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