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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>ひと・流行・話題> 記事 ひと・流行・話題 村上春樹現象 中国のブーム、実証的に2007年08月01日 足で稼いだ論文、と呼んでいいだろう。筑波大大学院の図書館情報メディア研究科で学ぶ中国人留学生王海藍(ワン・ハイラン)さん(32)の修士論文「中国における村上春樹の受容」は、中国で顕著な村上春樹現象を実証的にリポートして興味深い。
王さんは05年、中国の五つの大学で学生346人を対象にアンケートを行い、92%が村上さんの名を知っており、66%が作品を読んでいるという数字を得た。読後感は「孤独と無力感に満ちている」「社会システムや共同体を冷ややかに傍観」が多かった。論文にはこの調査を始め翻訳出版などのデータが盛り込まれ、ブームの内情を伝える。 中国各地の図書館や書店に取材したりしたところ、村上作品の簡体字による翻訳は海賊版も含めて70点も刊行されていた。発行元は内蒙古(もうこ)出版社から海南出版社まで全国11社。公共・大学図書館110館の9割が訳本を収蔵していた。『ノルウェイの森』の総発行部数は、外国文学としては記録的な140万以上に。 トリビアな情報も楽しめる。若手バンド「水晶湖」が最近出したCDのコピーは「村上春樹ファンはのがすべきでない」。収録曲「彩虹の南、流星の西」は『国境の南、太陽の西』のもじりらしい。主な読者は都市部の学生、小資(プチブル)と呼ばれる会社員だが、小資的な言動を「とても村上っぽい」と、揶揄(やゆ)と称賛をないまぜにした表現でからかうのは普通の現象だ。昨秋、オルハン・パムクがノーベル文学賞に決まった時は、「中国でトルコの村上春樹と呼ばれている作家」との報道があった。 改革・開放政策のもとで育ち、村上文学を愛読してきた王さんは語る。「作中に描かれた都市の風景に魅了され、漂う寂寥(せきりょう)感と喪失感に共鳴してきた。村上の小説は中国の若者が抱えている心の空白を埋めてくれる。高度経済成長下の都会で豊かな消費文化を享受していながら、癒やしようのない精神的な飢餓感を」 王さんの論文の要約は、指導教官で文芸評論家の黒古一夫さんが9月に刊行する評論集『村上春樹 「喪失」の物語から「関係」の再構築へ(仮題)』(勉誠出版)に収められる。 都市文学としての村上作品は、中国の農村部や少数民族の間でどう読まれているのか。それが王さんの次の課題になる。 ここから広告です 広告終わり ひと・流行・話題 バックナンバー
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