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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>ひと・流行・話題> 記事 ひと・流行・話題 出版、断てるか負の連鎖 書店や取次会社の試み始まる2007年08月17日 出版業界がもがいている。総売り上げは減り、本の寿命は縮まり、廃業する書店が後を絶たない。ネット書店の伸長も既存書店には逆風だ。それでも「本をつくっても売れない、読者の手に入らない」という「負の連鎖」を打開しようと、書店や取次会社の試みが始まっている。
■手に入らない 町の本屋、新刊枯渇 東京・JR新小岩駅北口にある第一書林は130平方メートルほどの典型的な「町の本屋さん」だ。入り口に8月、ベストセラーの『反転―闇社会の守護神と呼ばれて』(幻冬舎)が平積みで7冊積まれていた。 「うちぐらいの規模だと、単独で新聞広告に載った本を確保するのは大変なんです」と店長の大熊恒太郎さん。 昨年12月に約20法人の書店が共同出資する有限会社「NET21」に加盟してから新刊が入手しやすくなった。出版社との交渉窓口を一本化し、書店連合による規模の利点を生かす仕組みだ。 一定期間内なら返品が自由な委託販売制に支えられている出版業界では、返品を警戒する出版社が部数を抑えがちで、中小・零細書店は常に新刊の枯渇に悩む。 日本書店商業組合連合会が昨年5月にまとめた書店の「経営実態調査報告書」によると、新刊書籍が「ほとんど入らない」店が50%、ベストセラーとなると55%近くにのぼった。 一方、規模を生かして新刊を平積みにした大型書店は増加傾向だ。最大手の紀伊国屋書店は全国で急増中の大型ショッピングセンター(SC)内を中心に出店を加速。昨年は大分、東京・豊洲など4店、今年は5月まで横浜、名古屋、福岡など5店を開いた。平均店舗面積は2180平方メートル。 乙津宜男社長は「アマゾンなどネット経由で購入する人も増えている。これからの時代は品ぞろえ豊富な大型店でないと、実際に店を持つ『リアル書店』は生き残れない」と話す。 出版社のアルメディアによると、今年5月1日現在の全国の書店数は1万7098店で02年から15%の減。しかし総面積でみると逆に1割増で、書店の二極化が鮮明になっている。 ■返品たまらない 版元、大型書店に配本傾斜 中小・零細書店の悲鳴にも、返品リスクを抱える出版社側は要望に応えにくい。市場が低迷し、大手でも初版1万部を超えることは少なく、1万7000店の書店にそもそも行き渡ることはない。 販売力のある書店に手厚い配本を徹底しているのが幻冬舎。TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ、文教堂、紀伊国屋書店など販売上位150法人、約5000店舗に新刊本の75〜80%を集中する。 幻冬舎は「重要なのは需要予測。販売力がある書店がデータで分かるのだから、しっかり活用したい」と話す。 別の中堅出版社社長は「初版3000〜4000部の新刊を返品されたらたまらない。実績がある大型店を優先するのは当然」と言い切る。 出版ニュース社によると、昨年の新刊点数は8万618点で、10年前の96年から2万点以上増えた。一方、書籍の総発行数は96年から1億冊以上減の14億3600万冊、実売金額は900億円減の1兆94億円に落ち込んでいる。市場規模が縮小するなか、売上高維持のため、返品覚悟で「売れない本」を量産せざるを得ない状況になっている。 「ケータイなど他の娯楽が広がり、若者の読書離れは深刻なのに、売り上げ維持を重視した出版社は右肩上がりの時代の発想から抜けられない」と出版ジャーナリストの塩澤実信さんは話す。 ■必要冊数届けたい 流通データ管理へ300億円 書籍流通の7割を扱う取次会社は流通改革に本腰を入れている。 埼玉県桶川市。延べ床面積7万6000平方メートルという5階建ての巨大倉庫の内側では、書籍が仕分け機を通って次々と箱詰めされていた。1日に190万冊が全国の書店に送られ、書店からは65万冊が返品される。大手のトーハンが300億円を投じた流通センターだ。 全国30カ所以上に点在していた書籍の物流拠点を、80万点、1800万冊を収容できるセンターに集約。今年9月から全面稼働する。 背景には、業界全体で4割近い返品を減らさないと、出版界がもたないという危機感がある。 これまで出版業界では、市場にどの本がどれだけ流通しているのか、全体を把握する仕組みがなかった。店頭で客の注文があっても確実に入手できるかを返答できずにいた。 トーハンは、製造から販売まで流通を一括管理するサプライチェーン・マネジメント(SCM)を整備した。書店の注文に確実に応じられるとともに、売れる書店に必要なだけの本を送れるようにするのがねらいだ。 トーハンと並ぶ大手の日本出版販売もSCMに取り組んでいる。東京・王子にある王子流通センターを100億円かけて拡張し、近く本格稼働させる。 出版不況の大きな要因とされる「流通の非効率」が改善に向かえば、「本が手に入らない」事態は減りそうだ。 ただ、大手出版社の首脳は「いくら流通データを集約しても返品を減らせるかは別問題。書店の注文に応じて配本するかわりに、返品は一定の割合に制限する『責任販売制』が一部で試みられており、この割合を広げることが重要だ」と指摘する。「町の本屋」で欲しい本が買え、業界全体の低迷を打開するまでには、まだ課題は多い。 ここから広告です 広告終わり この記事の関連情報ひと・流行・話題 バックナンバー
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