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ひと・流行・話題

広がる本屋のポイント制 期待と不安が交錯

2007年08月30日

 買い物のポイントを金券や景品類に交換できるサービスが、再販制度によって値引きが不可能な本屋さんで、じわじわと広がっている。出版業界全体が落ち込むなか、「お楽しみ程度の読者サービスは不可欠」というのが推進側の言い分だが、利益率が低い書店にとっては1〜2%程度でもコスト負担は重い。「再販制度を揺るがしかねない」という声も根強く、期待と不安が交錯している。

■推進派「ささやかな楽しみ程度」/反対派「経営、再販制度危うく」

 大手書店でいち早く05年に会員制ポイントカードを全国の店舗で導入した三省堂。会員は30万人近くに達し、購入冊数は非会員より多い「お得意様」だ。28日には通信教育大手のZ会と提携し、小〜高校生向けのジュニアカードを12月に出すことも決めた。これまでのサービスは購入金額の1%分のポイントがつき、100ポイントから専用の商品券がもらえる仕組みだが、ジュニアカード会員が参考書を買った場合は1.5%、Z会の参考書の場合は2.5%を還元する。

 業界の大きな転機とみられているのは、取り次ぎ大手の日本出版販売(日販)が昨年始めた会員制の「Honya Club」だ。書店により異なるが、1%還元する例が多い。導入1年余で取引がある全国約120書店で計70万人以上の会員を獲得した。会員1000万人を目指すという。

 東京・自由が丘の青山ブックセンター自由が丘店は、昨年10月に「Honya Club」を導入、1万6000人の会員を集めた。店の目の前に古書店がオープンするなど競争環境が厳しくなり、サービスの一環で始めた。「町の本屋として読者とのつながりが濃くなったのはプラス」という。

■客層把握も

 ポイント制を導入する背景には、会員の購買履歴などから客層や地域特性にあわせた品ぞろえを考えたり、会員向けにメールを送ったりして、販売促進を図る狙いがある。

 「これまで書店には顧客情報がなく、販売促進も手探りだった。データを活用した攻めの販促で出版不況の克服につなげたい」と日販の担当者は話す。

 出版社と書店が、値引き競争をしない再販契約を結んでいる現行制度下でのポイントサービスは、「事実上の値引き」になりかねない。それでも大手書店の首脳は「時代の流れ。本格的に検討しないと」。

■公取の意向

 元々のきっかけは98年に公正取引委員会が業界に求めた「再販制度の弾力運用」だ。再販制度のもとでも消費者利益をはかる方策を求めるもので、事実上ポイント制容認と受け止められた。この後、01〜02年ごろには東京・神田でポイントの率を競う「神田戦争」が起こったり、家電量販店が割引率の高いポイントを書籍販売にも導入して業界が自粛を申し入れたり、曲折があった。

 日本書店商業組合連合会(日書連)は中小・零細書店を代弁して、「値引きを禁じる再販契約に違反する」とポイント制に反対してきた。

 が、公取委が「低率のポイントをやめさせるのは消費者利益に反する」との見解を示したことで状況が一変。公取委の意向をくむ形で、業界は昨年5月、「トレーディングスタンプ等のサービスは2%(最初の1年間は1%)まで可」という自主ルールをつくった。ただ、自主ルールのサービスの対価は「景品類」で、「金券」は「値引き類似行為にあたる」と関係者は話す。金券を対価にしたポイントカードは厳密にはルールの枠外だ。

 「ささやかなお楽しみが再販制度の存廃を左右するものではない」とポイント制に賛成する出版社首脳。電子マネーの普及などでコンビニなど本屋以外で雑誌を買えばポイントがつく時代だけに、「本屋だけが気を使っても、何の考慮もない他業種にやられるだけ」(中堅書店店長)という声は広まっている。

■低い利益率

 とはいえ、業界では強い警戒感がある。特に中小・零細書店にとっては深刻な経営問題につながる。昨年の書店の平均純利益率は、日販調べで0.4%(昨年)、同じく大手のトーハン調べで0.19%(昨年度)にすぎず、「お楽しみ程度」でも経営に影響が大きいからだ。

 反対派の関係者は「あいまいなまま『事実上の値引き』が広まれば、競争が激化するだけで書店経営を圧迫し、再販制度も危うくなる」と不安を隠さない。出版不況のなか、再販制度をどう時代にあわせていくか、模索は続きそうだ。

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