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ひと・流行・話題

「ガラスのうさぎ」作者が新著 病床で執筆

2007年09月02日

 自らの戦争体験をつづった「ガラスのうさぎ」の作者、高木敏子さん(75)が、このほど「ラストメッセージ ガラスのうさぎとともに生きて」(メディアパル)を出版した。最近は体調がすぐれず、医師に制止されつつも書きあげた。「私の遺言」というこの本に込めた思いを高木さんに聞いた。

 高木さんは、東京・両国出身。東京大空襲で母と妹2人を、終戦10日前には米軍機の機銃掃射を受け、一緒にいた父を亡くした。戦中戦後の過酷な体験を記した「ガラスのうさぎ」は、戦争放棄をうたう「憲法第2章第9条」を「太陽の文面」と表現した。「ラストメッセージ」は、戦中の話に加え、本の出版経緯や反響、平和を願う輪の広がりを描いている。

 「ガラスのうさぎ」は子ども向けに書きましたが、「ラストメッセージ」は高校生以上向け。戦争を知らない大人が増えたこともありますが、最近の風潮に危機感を感じるからです。

 過去にも、スパイ防止法賛成の署名を集める女性に取り囲まれ、徴兵制を唱える改憲派の老人とバスの中で大激論を交わしたことがありました。でも、今ほどの恐怖ではありません。

 60年戦争をしなかった日本が、イラク戦争で自衛隊を派遣しました。「お手伝い戦争」が起きてもおかしくなかった。そうなれば、9条はなし崩しです。

 「ガラス――」を書いた後に勉強して知ったことも多いのですが、戦争は1941年に突然始まったわけではなかった。その前から言論や芸術、宗教弾圧が行われていたのです。「国防婦人会」(岩波新書)を読み、市川房枝さんら知識層の女性が戦意高揚に協力してしまっていたのにも驚きました。そんな人もあらがえない勢いだったのです。

 教育基本法改正や国民投票法が次々と通り、防衛庁が省になって発言権を増した今、当時と同じような空気を感じます。それを許しているのは、大人です。

 「ガラス――」は、青少年読書感想文全国コンクール課題図書に選ばれるなどして子どもに読み継がれてきた。世界でも9カ国語に翻訳された。

 「攻撃されたらどうする」という人がいますが、話し合いで解決すればいい。「ガラス――」の感想文で総理大臣賞をとった中学生は、平和の使徒を目指し外務省に入りました。タイでは、「争いを話し合いで解決しようと思えるように」との国王の願いから、翻訳本500冊が宗教対立の激しい地域の学校に配られたそうです。

 米国と戦争した事実さえ知らない若者が増えたことに驚き、高木さんは電車で乗り合わせた女子高生らに話しかけるようにしている。

 下町だけで10万人が亡くなった東京に、戦争資料館はありません。戦時中の苦労を展示する施設はありますが、原因からその道のりまで被害・加害を超えた視点で学べる場が欲しい。声をかけた若者はみな、「なぜ止められなかったのか」を知りたがります。平和祈念館を、ぜひ実現してほしいのです。

 この数年、持病などが悪化し、昨年から講演活動ができなくなった。「信念だけでは生きられなくなった」と高木さん。入退院を繰り返しながら1年かけて本にまとめた。

 今回の参院選で、国民は自民党にNOを言うことができた。今度は「平和を守る」目線で選挙をしてみてください。その1票で、流れを止めることができるのです。

 戦争を起こそうとするのは、人の心です。戦争を起こさせないようにするのも、人の心です。その心の輪を世界に広げてください。

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