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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>ひと・流行・話題> 記事 ひと・流行・話題 新作はタヌキが主役「有頂天家族」 森見登美彦さん2007年10月22日 もてない先輩と無邪気な女子学生のラブコメディー『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞した森見登美彦さん(28)が、新作『有頂天家族』(幻冬舎)で、ホロリとさせる家族愛を描いた。といっても主人公はタヌキ。「人間では恥ずかしくて書けないメロドラマを、思いつくだけ盛り込んだ物語の王道」と話す。 主人公は、京都・下鴨神社そばの森に住む名門下鴨家の三男矢三郎。傑物といわれた父が、鍋となって人間にくわれたのはなぜかという謎を追いかけながら、日々を面白おかしく生きようとする。責任感ばかり強い長男と、根暗でカエルに化けたままの次男、甘えん坊の弟らと力を合わせて宿敵・夷川家と戦い、気むずかしい天狗(てんぐ)の赤玉先生や美しい悪女弁天にきりきり舞いさせられる活劇だ。 ひねくれた自意識過剰の大学生を主人公とする『太陽の塔』でデビュー。その路線を発展させてきたが、「ヘンチクリンさを追求せず、のほほんとした普通の物語が面白く書けるか心配だった。家族愛や兄弟愛、男女の愛憎とか、いっぺん書かないといけないと思っていた」という。 テーマはベタだが、森見ファンタジーの妄想の世界はそのまま。今回もタヌキの偽叡山電車が京都市内を駆け抜け、大文字の送り火の上を茶室が飛ぶ。「その点はタヌキなので、やりたい放題やってます」。地上は人間、地べたはタヌキ、屋上界は天狗という京都ワンダーランドが築かれた。 ずっと京都を舞台にしてきた。「僕の小説は、日常の中で変なことがおこるファンタジー。あり得ないことでも、京都だったらなんとなく許されるし、古くさい文章も、京都の町が舞台だと反発が緩やかで大目に見てもらえる」。糺(ただす)の森や六道珍皇寺に先斗町などの実在の場所に、妄想や幻想が溶けこみ、密度の高い文章ができあがる。 しかし、次作ははじめて京都を離れ、郊外の住宅地を舞台にする予定という。 公務員として働きながら、とぎれずに小説を発表している。「2週間先のことは実感をもてない」という日々。かなりスリムで、山本周五郎賞の選考委員の浅田次郎さんにも体調を心配されたが、「小説とは無関係の静かな職場に身を置き、下っ端として働く時間は貴重なんです」。
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