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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>ひと・流行・話題> 記事 ひと・流行・話題 激動中国 浅田次郎さん「血わき肉躍る冒険小説」完結2007年12月23日 清朝末期から軍閥割拠へ向かう激動の中国を舞台にした浅田次郎さんの小説『中原(ちゅうげん)の虹』(全4巻、講談社)が完結した。『蒼穹(そうきゅう)の昴(すばる)』『珍妃の井戸』に続く近代中国の成立過程を追った歴史ロマンシリーズだ。今回は「血わき肉躍る冒険小説を書きたかった」という浅田さん。馬賊の頭目張作霖を主人公に、英雄たちの姿を存分に描いた。 『中原の虹』は、シャーマンによって「満州の王者たれ」という天命を背負わされた張作霖が、秦の始皇帝から天下の覇者へ連綿と伝わる巨大な金剛石「龍玉(ロンユイ)」を手に入れて始まる。爆破事件の印象のみ強い張作霖だが、ここでは、抜きんでたリーダーシップと戦闘能力を持ち、自律自尊の志を持つ、貧乏人のスーパーヒーローだ。「動乱の時代は、書いていてわくわくする」 シリーズを通し、歴史上悪名高い人物や埋もれた人物を、独自の視点で描く。「歴史に善悪はない、成功と失敗があるだけ」という歴史観から、権力欲の権化とされる西太后は、半世紀も政権の崩壊をくい止めた外交手腕を誇る慈母で、裏切りを重ねた袁世凱を動かしたのは愛国心だった、という解釈だ。 『中原の虹』の群像の中で際だつのは、国民党の幹部宋教仁だ。31歳で凶弾に倒れたが、「孫文よりも傑物だった」と見る。〈名誉は何もいらない。私が勲とするところは、ひとえに民の平安である〉。この、宋の最後の演説に、政治家たる者への浅田さんの思いが込められた。「日本の政治家もケネディ元大統領のような、心を揺るがせる演説ができないものか」 執筆にあたって何度か中国を訪れた浅田さん。列車で大陸を横断、撫順の収容所で元馬賊の死に思いをはせた。「今の日本は全体がきゅうきゅうと小さくなっている気がする。政治家は自分の利益しか考えていない。出版界も文化の担い手という意識より、自分たちの本を作るのが大事なようだ」と嘆く。 「短歌のように、1行でどれくらいの世界が書けるか、という気持ちで臨んできた。『蒼穹の昴』から順に読んでほしい」。シリーズを通すと大長編だが、皇帝から一兵卒まで視点をさまざまに変え、一気に読ませる。続編は、2年後に雑誌で連載が始まる予定だ。
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