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「吾妻鏡」に「日本書記」… 史書の現代語版、出版続々

2008年01月04日

 平氏を倒し、鎌倉幕府を打ち立てた源頼朝。その挙兵から将軍宗尊(むねたか)親王の追放までを記録した歴史書「吾妻鏡(あづまかがみ)」の現代語訳の刊行がこのほど始まった。ほかにも「日本書紀」などの現代語版の出版も相次ぐ。いま、歴史書を現代語で読む意味とは何なのだろう。

 『現代語訳 吾妻鏡』(吉川弘文館)は全16巻。『新訂増補国史大系』版を底本に選び、五味文彦・放送大学教授(日本中世史)らが、十数人がかりで現代語に訳している。昨年10月に第1巻が刊行、11年までに完結させる予定だ。

 「吾妻鏡」は14世紀ごろに成立したと考えられる鎌倉幕府の将軍の年代記で、豊富なエピソードが特色の一つ。徳川家康が愛読したことでも知られる。

■読みやすく注

 「企画は8年ほど前からありましたが、思ったより時間がかかりました」と吉川弘文館の宮川久さん。

 創業150周年を迎えた歴史書出版の同社が、現代語訳を出すのは「おそらく初めて」。

 「鎌倉時代に興味がある人にとって、吾妻鏡は一番の基本文献。もっと手軽に読みたいとの要望に、思い切って応えました」

 地名や人名にいたるまで細かな注が付されており、系図や地図も充実させるなど、初心者でも読みやすい工夫が施されている。

 一方、小学館も昨夏から刊行中の『日本の古典をよむ』(全20巻)で、『古事記』『日本書紀 上』『日本書紀 下・風土記』などを相次ぎ出版した。原文の2〜7割ほどを収録したダイジェスト版だが、現代語訳に加え、ルビをつけた読み下し文、全体のあらすじを付記する。

 本来、文学中心のシリーズだが、「中高年の方から、歴史ものを入れてほしいという要望が多かった」と編集部は説明する。

 なぜ現代語訳なのか。雑誌「歴史読本」などを出版する新人物往来社の大出俊幸さんは、こう指摘する。

 歴史好きの人たちの中には、TVドラマや歴史小説に触発され、「今度は原典が読みたい」と思う人が少なくない。「でも、原文や従来の読み下し文は、やはり難しい。まず手に取ってもらうには、現代語訳が一番。そのあと専門書に進んでもらえばいいんです」

 同社は、この分野ではいわばパイオニアだ。これまでに織田家に仕えた家に伝わる古文書「武功夜話(ぶこうやわ)」や、織田信長の一代記「信長公記(しんちょうこうき)」の現代語訳などを手がけ、一定の需要があることをつかんだ。

 中でも、信長の生涯を描いた「信長公記」は、信長人気もあって、06年出版された新訂版も含め、これまでに1万部近くが売れたという。

■学者にも利点

 「翻訳」にあたる学者たちにとっても、メリットはあるようだ。

 『吾妻鏡』を手がけた五味教授は「読み飛ばしている時には意識していなかった、個々の文脈の本来の意味を考え直さなければならないし、原典にある間違いや偽文書についても再検討する必要が出てくる。研究を進めるという点でも意味がある」と話している。

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