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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>ひと・流行・話題> 記事 ひと・流行・話題 恋に落ちない男と女は… 山崎ナオコーラさんが新作2008年01月05日 男と女が出会い、恋に落ちればドラマが始まる。では、恋人関係にならなかったら? 山崎ナオコーラさんの新作中編『カツラ美容室別室』(河出書房新社)は、男女の微妙な距離感をとらえた新鮮な小説だ。「定型を外したストーリーに挑んでみた」という山崎さんに聞いた。
主人公は27歳のサラリーマン、淳之介。年上の友人の紹介で、東京・高円寺の「桂(カツラ)美容室別室」に働く同い年の美容師エリコと知り合い、「何かが始まるような気が」する。だが、メールを返信する頻度やデートする機会を考えあぐね、煮え切らない関係のまま推移する。男性の店長カツラさんや同僚の女性美容師・桃井さんも交えた、微細な人間模様を描く。 山崎さんは「人と人は、距離を縮めるために出会っているのではない。男女がくっつくストーリーにしなくてもいい、と考えた。かと言って、今の若い人は恋愛におっくうだと言われると心外で、大昔から恋人関係でなくても和歌を書き送るなど、疑似恋愛的な関係はあったはず」と語る。 「小説では関係について言葉を使うことになるが、恋人、友だち、同僚などと関係のレッテルを張るのは暴力的なことだと思う。言葉にきっちり当てはまる関係って、なかなかないと思うし、話す相手によって関係の説明が異なったりするのが現実でしょう」 なぜ、「別室」かというと、カツラさんの母親が経営する「本店」が九州・小倉にあるからだ。また、年上のエリコよりも桃井さんの美容師歴の方が長く、年齢とキャリアとが逆転しているため、関係がぎくしゃくする。磁場の中心をあえてズラした物語設定だ。 「エリコと店長の関係も書きたかった。仕事上、年上の男性とどう付き合うか? 割り切った感情しかない、という人は少ないのでは。そのあいまいな感情は一種の友情だと思う。エリコは最後に地獄に落としたかった。ヒロインなので、ひどい目に遭うくらいで割に合っているんですよ」 山崎さんはジェンダーに敏感な作家と言われる。男女の性差がゆるやかで、どこか中性的に描かれる。 「例えば、男性は名字で、女性は名前で出てくるような小説には腹が立つ。既成の男女観に当てはめたシーンはひっくり返したくなります。そうした違和感が、書く原動力です」 この小説は3月30日に始まり、翌年の3月28日に終わる。 「お花見に始まって、お花見に終わる形にした。『来年もやろうね』と言いながら、実際の人間関係では、次の花見をしないことも多い。そう言っている時点では真実なのに、のちにウソになる。言葉の不思議さ、怖さを思います」 ここから広告です 広告終わり この記事の関連情報ひと・流行・話題 バックナンバー
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