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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>ひと・流行・話題> 記事 ひと・流行・話題 こころの闇とらえた 木村伊兵衛賞 アサヒカメラ選考2008年03月18日 「今年の受賞作が期せずして、共にこころの闇に向かっていたのは、偶然の一致ともいえまい」
写真家の土田ヒロミさんは、そう選考をふり返る。第33回木村伊兵衛写真賞に選ばれた、岡田敦さん(28)の写真集『I am』、志賀理江子さん(27)の『Lilly』と『CANARY』に対する選考委員の評が、20日発売の「アサヒカメラ 4月号」に掲載される。受賞作はいずれも07年の写真集。死と生へのまなざしを強く感じさせ、いまの時代に確かなものは何なのか、と問いかけてくる。 33人の45作品がノミネートされ、昨年に続き2人受賞となった。 岡田さんは、ウェブでの募集に応じた10〜20代の約50人の、ありのままの姿を撮った。顔もあれば、裸のボディーも、自傷行為の跡の残る腕もある。 この作品に「清廉潔白な美しさを感じる」と写真家・篠山紀信さんは書く。「リストカットという現実の病理を撮りながらもそれにまつわる社会的諸問題を削(そ)いでいき、真っ白いホリゾントの前に純化された彼女たちの姿だけを表出していく」 編集者の都築響一さんは「いまこの国で若者であることの苦しさがドクドク流れているようで、すごくフトコロの深い作品集だと思う」と評価する。 一方、志賀さんの『Lilly』は、ロンドンの公営団地の住民に被写体になってもらい、そのプリントをさらに撮影した作品などで構成。『CANARY』は、仙台、オーストラリアなどで住民に質問し、答えに示された場所をたどりながら撮影したという。 他人を巻き込みつくり上げていった作品に、土田さんは闇のなかでの孤独とコミュニケーションを感じとり、都築さんは「写真というメディアを操る画家の印象」を受けたという。「フランシス・ベーコンの油絵のような、完璧(かんぺき)にコントロールされたダークネスというものに強く惹(ひ)かれる」 対照的な作風だが、写真家の藤原新也さんは「ブラックホールのような負の輝きを発する2作品にリアリティーを感じた」。2人の作品は、この10年の受賞作には見られなかった「身体や時代の濃密な闇」をはらみ、「家族の陰惨な殺し合いの時代に『ドラえもん』よりも『カラマーゾフの兄弟』にリアルを感じはじめた、そんな風景と妙に重なる」。 『I am』と『CANARY』は、06年設立したばかりの出版社、赤々(あかあか)舎が出した。都築さんは、ノミネート作品で大手出版社によるものは「ゼロ!」だった写真メディアの現状にも言及している。 受賞作品展は4月19〜28日、東京・新宿のコニカミノルタプラザで開かれる。
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