2008年4月5日
作家・橋本治さんが昨秋、『双調平家物語』全15巻を完成させたことを祝う会が3月末、東京都内で開かれた。
平家物語の現代語訳、と一口に言っては、橋本治的解釈による『双調〜』の迫力は伝わらないだろう。20世紀末の98年秋から刊行が始まって、約10年がかり。しかもその前には、源氏物語の橋本版『窯変源氏物語』(全14巻)も手がけている。原稿用紙に換算して「平家8700枚、源氏9700枚」と、本人はさらりと言うが、そもそも源氏と平家を1人で現代語の小説に仕立て直した快挙は、空前絶後といっていい。
しかし、あいさつに立った橋本さんは「大したことやってないと思うし、次は太平記か、と言われても、どこまでやれば大したことなのかよくわからない」と、淡々と振り返るだけなのだ。
「昭和が終わって源氏をやり、世紀の変わり目に平家をやり。仕事してるか、ぶっ倒れて寝てるか、ベッドと机を往復するだけの生活だったけど、そういうの、実はいやじゃないんですよね」と、これは本気らしい。「人からは変わったことをしていると思われる。自分では普通なんですが。どこかで世の中との付き合い方がわからなくなった」
「代表作ができたら死んでもいいという気はある」「自由業に定年はない。この場にいる人が10年後、どれだけ残っているか」などなど、橋本さんならではの本気の言葉を次々と繰り出す。
実は、数日前に60歳になったばかり。会はその祝いも兼ね、橋本さんは赤い靴下で応えていた。最後に、母の美代子さん(82)が「冥土の旅の土産話ができました」とあいさつし、息子は「親が出てくるのはねぇ。きっと、まだ死にませんよ」と照れていた。
(大上朝美)
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