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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>ひと・流行・話題> 記事 ひと・流行・話題 語りの視点「演劇を応用」 大江賞受賞の岡田利規さん2008年04月08日 第2回大江健三郎賞に選ばれたのは、劇団「チェルフィッチュ」主宰の岡田利規氏の小説『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(新潮社)。このところ新鋭劇作家の小説が相次ぎ芥川賞や三島賞の候補に挙がっていたが文学賞の受賞は初めて。受賞作は外国語に翻訳・出版される。岡田氏は「賞金をもらうよりうれしい」と語った。
受賞作は二つの中編を収める。「三月の5日間」は、03年に米国がイラク空爆を始めた時、東京・六本木のライブハウスで知り合った男女がラブホテルに行き、あえてニュースを見ずに過ごした5日間を描く。大江氏は「スムーズに転換する、語りの主体が多様……小説家としての技術が並大抵でない」と評した。 例えば〈一度振り向いて、私が追っかけてきていないことを確かめた〉という文章の隠れた主語は、「私」と直前まで話していた「彼」だ。 岡田氏は「演劇では、ある人物を演じるうちに別の人物になる、という試みをした。その応用で、小説ならできることとして、一人称視点からふと神の視点になる、つまり目と語りが同化しなくなる、という書き方をしてみた。特定の人称の境界から出たり入ったりしてもいい、という感覚が僕にはある」と言う。 「戦争へのアクセスは、ニュースを見続けることだけではない。見ないと決めている男女が、関心がないわけではない、ということを書いた」 もう1編「わたしの場所の複数」は、バイトを休むことにした妻が寝そべりながら夫へメールを送り、いつしかファストフード店で仮眠中の夫を見る視点へと変わる奇抜な小説。大江氏は「現在に生きている日本人の女性の、これだけインテリジェントな内面……に触れうる小説を初めて読んだ……。この数年、これだけ良質の悲しみを新しい小説から感じとったことはない」という。 岡田氏は「〈思う〉と〈見える〉に違いがないと考えれば、どんな遠くのものを書いてもいいはず。女性の身体を軸にして書いたので、遠くへ離れられた」と語る。 「演劇に興味を持ったのは大学時代だが、小説への関心はずっと前。演劇の上演も読書も、ある特別な時間をつくるものだと思っています」(小山内伸)
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