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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>ひと・流行・話題> 記事 ひと・流行・話題 いろいろな人生つながって 西加奈子さん2作刊行2008年04月08日 つながっていくこと――人と人、場所と場所、思いや想像さえも。「それが小説の幸せ」と西加奈子さんは言う。小説『こうふく みどりの』と『こうふく あかの』(共に小学館)を続けて刊行した。タイトルに「こうふく」を盛り込んだのは、「一生作家でやっていく、覚悟の決意表明」だ。
『みどりの』の主人公は中学2年の女の子。舞台は大阪の下町。自転車が行き交う商店街や住宅街に、食べ物やペットのにおいが漂う。少女の語りを軸に祖母や母、いとこ、謎の女の独白がはさまれ時空を超えた人生が絡み合う。 「アホやなあ、と思わせる女があこがれ。反対に、重大な罪を犯してもシャーシャーと長生きしている女の怖さも書きたかった」。語り手を初潮前後の少女としたことで、男女のドロドロも変なすごみがなく、あたたかな物語になった。 今年、織田作之助賞を受賞した『通天閣』(筑摩書房)など、大阪弁のせりふが魅力的な作品が多い。今回初めて、地の文も大阪弁に。リズミカルな口語体だ。本文中、唐突に〈対向車注意〉とか〈焼肉 金〉といった言葉が差し挟まれる“遊び”も。「会話中でも看板や雑誌の字がぱっと目に飛び込んでくるでしょ。あれです」 一方、『あかの』は標準語が基本。セックスレスの妻から妊娠を告げられた39歳の会社員と、2039年という未来のプロレスラーの話が交互に語られる。人目や評判を気にする自意識過剰な会社員の堅苦しい語り口が、痛くて面白い。「絶対にこういう人おるし、うちにもあるし」 この2作、同時進行で書かれた。上下巻というわけではないが、つながっている部分はある。「交差したりすれ違ったり人生の道はいろいろやけど、『一方その頃』という言葉を使えば物語はつなげていける。書くことも読むことも個人的な作業やけど、作者と読者と別の読者も本でつながれている。本の中では、他人の人生を生きることさえできるし」 そんな、“本”の幸せに気が付いた。 「書くのがしんどいと言うのは恥ずかしくて、高尚やない、芸術家ぶりたくないと思っていた。でも、それもヘンな自意識。逃げ場作るの、やめました」 この2作を書き終え、言葉の力を改めて思った。「50音でいろんなことができる。しかも、50音しか与えられていないのは村上春樹も私も一緒」 77年、テヘラン生まれ。小学5年までカイロで育ち大阪へ。小さい頃から観察者だった。意欲にきらめく目。「一生作家」が、また1人誕生した。(吉村千彰) ここから広告です 広告終わり ひと・流行・話題 バックナンバー
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