2008年6月7日
被爆者の服を撮影する石内都さん=広島市中区の広島平和記念資料館、伊ケ崎忍撮影
靴下(写真集『ひろしま』より、© ISHIUCHI Miyako,2008)
ワンピース(写真集『ひろしま』から、©ISHIUCHI Miyako,2008)
写真家の石内都さんが、広島の被爆者が着ていたワンピースやブラウスなど45点を撮った写真集『ひろしま』(集英社)を出版した。45年8月6日のその瞬間まで人々の身を包んでいたぼろぼろの衣類を「なんでだろう」と考えながら見てほしいという。広島と東京で写真展も開かれる。
4月、広島市中区の広島平和記念資料館で、石内さんは展覧会に向けて追加撮影をしていた。「被爆で破れた所ばかりを強調したくはない。ブドウの模様や、きれいな縫い目。丁寧に作られた服が、風化せずに私と同じ時間を永らえている現実感を撮りたい」
布を透かせたいと、16本の蛍光灯を使った特注のライトテーブルを持ち込んだ。「縦糸と横糸の間に光が入ると、過去が見えてくる」と、その上に服をそっと置き、脚立にのぼって手持ちカメラで撮影する。日常の生活感を伝えたいと、被写体は優しげな女性の服が中心だ。
戦後の47年生まれの石内さんは、書籍編集者に今回の企画を持ち込まれるまで広島を訪れたことはなかった。だが、初めて見た原爆ドームは「みんなの視線に耐える姿が、けなげだった」。事前に来歴を見ずに撮影したが、写真集の巻頭と巻末を飾ったワンピースが、共に持ち主不明と知り、改めて胸が痛んだという。
ワンピースの花柄や水玉は今も鮮やかで、内にあった若い身体の質感が見えるようだ。よれて穴の開いた靴下には、履いていた男の足が透ける。丁寧なつぎあてや、着物を仕立て直した防災ずきんからは、往時の「服」との付き合い方も見える。原爆と戦後の経済成長が、こうした関係を壊したのだということも。
菊判80ページ、1890円。写真展「ひろしま」は28日〜8月10日、広島市現代美術館で。11月15日〜09年1月11日には東京都の目黒区美術館で「ひろしま/ヨコスカ」展がある。(小石勝朗、阿久沢悦子)
著者:石内 都
出版社:集英社 価格:¥ 1,890
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