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1コマ漫画、元気取り戻せるか 価値観多様化など逆風

2008年8月31日

 1コマ風刺漫画が逆風にさらされている。幕末の日本で新聞とともに誕生。権力への批判や世相の揶揄(やゆ)を、軽妙な笑いでくるみ、時には痛烈に突いて大衆の思いをすくいとってきたが、メディアや価値観の多様化で徐々に元気を失った。1コマ漫画は生き残れるか。

 「1コマ漫画は生き残れるか」。刺激的なタイトルのフォーラムが先月、横浜市で開かれた。司会にヒサクニヒコさん、パネリストに久里洋二さん、秋竜山さん、所ゆきよしさんらベテラン1コマ漫画家が集った。

 「政治風刺ではワイドショーのコメントの方がおもしろい」「単行本になりにくくて収入が悪く、若者が入ってこない」「新聞や雑誌の掲載も、1コマ漫画を理解できる編集者も減った」……。危機感ともあきらめともつかない発言が続いた。

 1コマ漫画の源流は、幕末に欧米人が居留地で発行した新聞の風刺画にある。政治的な対立の激しい時代、ひと目でメッセージを伝える風刺漫画は重宝された。新聞や雑誌も競って掲載し、時事新報の北沢楽天、東京朝日新聞の岡本一平らの漫画家を生んだ。

 大正時代から昭和初期にかけても風刺漫画は隆盛を見せたが、第2次世界大戦中、その矛先は主に敵国へ向けられた。戦後は政治漫画の清水崑や近藤日出造、「社会戯評」の横山泰三らが活躍。ナンセンスで人気を博した加藤芳郎や、ブラックユーモアの山藤章二も独自の境地を開いた。

 だが「経済へと関心が移った高度成長期に、政治風刺漫画は徐々に力を失った」と、フォーラムにも参加した東京工芸大学マンガ学科准教授の細萱敦さん。さらに「1コマで描きがいのある強烈な個性の政治家も減り、政治のだいご味はストーリー漫画で描かれるようになった」とみる。

 京都国際マンガミュージアム研究員の表智之さんは「メディアも価値観も多様化し、風刺の前提となる社会のコモンセンスが薄れている」と分析する。

 現在、主な新聞各紙が1コマ政治・風刺漫画を載せるのは週に2〜5回。昨年は1コマを対象にした「読売国際漫画大賞」が29年の歴史に幕を閉じるなど厳しい状況が続く。

 風刺漫画史に詳しい帝京平成大学教授の清水勲さんは「社会が複雑化し、『敵』がはっきり見えない時代に風刺は描きづらい。ただ課題は山積しており、1コマで本質をあぶり出す風刺漫画の力は今こそ重要」と話す。

 盛り返す動きも。日本新聞博物館(横浜市)では「一枚マンガの折り返し展」を9月13日まで開催中。「閉塞(へいそく)感のある今こそ、ピリリとスパイスのきいた1コマを」と環境や高齢社会などをテーマに、ベテランから若手まで32作家の力作約80点が並ぶ。

 日本マンガ学会のカトゥーン(1コマなど短編漫画)部会は04年から年に1〜2回、新聞や雑誌に載った1コマ作品の品評会を開く。主宰する季刊誌「諷刺画研究」に「今年の1点」を選んで評している清水さんは「ピュリツァー賞にカトゥーン部門がある米国のように、日本も社会的に評価し、描き手を育てる仕組みが必要だ」と話す。(小川雪)

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