2008年12月27日
ミステリーランキングのランキングを出さなきゃ――評論家の大森望さんが「このミステリーがすごい! 09年版」の座談会で、冗談めかしてそんなふうに指摘するように、年末にミステリー小説のランキングを発表する出版社が増えた。ミステリーバブルに伴走してきたランキングも、かつてのお祭りムードは失われ、「多様化」が進んでいる。
草分け的存在の「週刊文春」ベスト10は今回、湊(みなと)かなえさんのデビュー作『告白』が1位。「このミス」の愛称が定着した、宝島社の「このミステリーがすごい!」国内編でも4位に入った。「このミス」の1位は伊坂幸太郎さんの『ゴールデンスランバー』。山本周五郎賞と08年本屋大賞を受けた作品。2位の柳広司さんの『ジョーカー・ゲーム』は太平洋戦争期の日本のスパイ養成学校が舞台だ。
また道尾秀介さんは『カラスの親指』『ラットマン』の2作品が「週刊文春」と「このミス」、早川書房の「ミステリが読みたい!」の三つでベスト10に入った。
評論家・批評家によるランキングでは新人・若手作家が人気を集めるが、書店の売り上げを反映する出版取次大手トーハンの年間ベストセラー(単行本・文芸)は、東野圭吾さんが上位3位を独占して安定した人気を示している。
ミステリー評論家の池上冬樹さんは「投票する側の立場でいえば、すでに人気のある中堅・大家より、新人の才能を評価しがち。かつてほどランキングが市場に影響を与えないので、マニア向けの『このミス』と、本来は一般向けだった『週刊文春』の差がなくなってきた」と分析する。
先物買いが過熱する評論家主導型のランキングに対し、07年に発行を始めた早川書房の「ミステリが読みたい!」は、ランキングを読者参加型にして、評論家と読み手の溝を埋めようとしている。たとえば「このミス」「週刊文春」でベスト10に入らなかった宮部みゆきさんの『おそろし』は、識者の得票が15点と低いものの、一般読者の投票が24点で5位に入った。
「もっと読みたい」という気分が満ちていたミステリーバブル期は、新しい才能を次々紹介するのが有効だったが、不況とともにミステリー離れが進む状況では、既に読まれている人気作家を手がかりに、読者を掘り起こすことが求められる。ランキングの多様化は、沈滞する出版状況を映している。(加藤修)
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ミステリー小説 主なベスト10
■「このミステリーがすごい!」2008BEST10国内編(07年11月〜08年10月)
(1)ゴールデンスランバー(伊坂幸太郎、新潮社)(2)ジョーカー・ゲーム(柳広司、角川書店)(3)完全恋愛(牧薩次、マガジンハウス)(4)告白(湊かなえ、双葉社)(5)新世界より(貴志祐介、講談社/上・下)(6)カラスの親指(道尾秀介、講談社)(7)黒百合(多島斗志之、東京創元社)(8)山魔の如き嗤うもの(三津田信三、原書房)(9)ディスコ探偵水曜日(舞城王太郎、新潮社/上・下)(10)ラットマン(道尾秀介、光文社)
■「週刊文春」2008ミステリーベスト10国内部門(07年11月〜08年10月)
(1)告白(2)ゴールデンスランバー(3)ジョーカー・ゲーム(4)ラットマン(5)聖女の救済(東野圭吾、文芸春秋)(6)完全恋愛(7)山魔の如き嗤うもの(8)黒百合(8)新世界より(10)カラスの親指
■「ミステリが読みたい!」ベスト・ミステリ2008日本部門(07年10月〜08年9月)
(1)ゴールデンスランバー(2)山魔の如き嗤うもの(3)告白(4)カラスの親指(5)おそろし(宮部みゆき、角川書店)(5)ラットマン(7)相棒(五十嵐貴久、PHP研究所)(8)ジョーカー・ゲーム(9)もう誘拐なんてしない(東川篤哉、文芸春秋)(10)ディスコ探偵水曜日
■トーハン年間ベストセラー(単行本・文芸、07年12月〜08年11月)
(1)流星の絆(東野圭吾、講談社)(2)聖女の救済(3)ガリレオの苦悩(東野圭吾、文芸春秋)(4)犬と私の10の約束(川口晴、文芸春秋)(5)のぼうの城(和田竜、小学館)(6)L change the WorLd(M、集英社)(7)食堂かたつむり(小川糸、ポプラ社)(8)ゴールデンスランバー(9)私の男(桜庭一樹、文芸春秋)(10)おそろし
著者:湊 かなえ
出版社:双葉社 価格:¥ 1,470
著者:伊坂 幸太郎
出版社:新潮社 価格:¥ 1,680
著者:柳 広司
出版社:角川グループパブリッシング 価格:¥ 1,575
著者:道尾 秀介
出版社:講談社 価格:¥ 1,785
著者:道尾 秀介
出版社:光文社 価格:¥ 1,680
著者:宮部 みゆき
出版社:角川グループパブリッシング 価格:¥ 1,785