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小説取り巻く「既視感」 ドゥマゴ文学賞受賞の平野啓一郎さん

2009年10月26日

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 火星探査船の宇宙飛行士を中心に描く近未来小説『ドーン』(講談社)でドゥマゴ文学賞を受賞した平野啓一郎さんが6日、選考委員の島田雅彦さんとの受賞記念対談をした。そこで、情報の多い現代における小説の困難さについて語った。

 例えば宇宙旅行。30年、40年後、何百万円かで宇宙に行ける時代になった時、行きたいと思うかとの問いを立てる。平野さんは、そこまでして行きたいと思わないんじゃないか、という。理由は「良くも悪くも、宇宙に限らず色んな情報を詳細に知りすぎていて、既視感が鮮明になってきた。だんだん体験してなくても、してしまったような感覚がでてきた」からだ。

 ルーブル美術館に行く前から、モナリザは何らかの形で見ている人がほとんどだ。だから実物を見ても、「十分嫌と言うほど知っている」という感想を持つのではないか、という。同様に、宇宙を体験しても「本物を見たんだ、と確認しておしまい」になりかねないと指摘した。

 平野さんは、これだけ映像が発達すると、文字という記号から頭の中で世界を立ち上げる能力は相対的に低下していくとみる。「詩的に描写するのではなく、説明的に書くときは、情景が浮かびにくくなっている。その能力が復活してくる環境にはないと思う」。何が書け、何が読まれ得るのか。小説が直面する困難が増すなかで、読まれ続ける文学を担う意志を感じた。(高津祐典)

表紙画像

ドーン

著者:平野 啓一郎

出版社:講談社   価格:¥ 1,890

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