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「もしドラ」100万部 部活で実践、わかりやすさ人気

2010年7月29日

写真:「もしドラ」の表紙。「萌(も)え系」と呼ばれるアニメイラストが特徴だ「もしドラ」の表紙。「萌(も)え系」と呼ばれるアニメイラストが特徴だ

 経営学と高校野球を組み合わせたビジネス小説「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(もしドラ)の発行部数が、22日で100万部を突破した。作中に登場する経営論を実際の部活に生かす女子マネジャーも現れた。

 福島商業高校3年の伊藤美紀さん(18)は3月、野球部のOBから「いい本がある」と「もしドラ」を渡された。

 昨夏で先輩マネジャーが引退。後輩もいない。部員との接し方に悩んでいた。

 最初は内容が理解できなかったが、少しずつ読み進めるうちに引き込まれた。印象的だったのは主人公の女子マネジャーが、部員の思いをさりげなく聞き出していくシーンだ。病気で入院中のもう1人の女子マネジャーと、お見舞いと称してキャプテンやエースを呼び出し、悩みや、部への要望を語らせる。部員に頼まれてから動くことが多かった自分とギャップを感じた。

 少しずつ自分から選手に話しかけてみることにした。顧客である選手のニーズをつかむマーケティングの実践だ。心にとめた選手の思いは監督にさりげなく伝える。同じクラスの部員と、前日の試合について話し合えるようになり、「マネジャーという仕事を楽しめるようになった」。

 今夏の福島大会は3回戦負け。今年こそ甲子園と信じていただけに悔しさは残る。でも、1試合ごとにチームがまとまり、ベンチのかけ声まで変わった。「これまでにない一体感だった」という。

 「もしドラ」の実践は野球にとどまらない。

 京都大4年でラグビー部副将の小堀充雄さん(22)は6月ごろに読んだ。練習計画などを練る立場。リーダー論などのビジネス書は読んでいたが、なかなか応用できずに悩んでいたので、同じスポーツの例えはわかりやすかった。

 主人公にならって部員たちと話す時間を増やしてみると意外なことに気づいた。単純にラグビーが好きで続けてきた自分と違い、「勝たなきゃ意味がない」「みんなでやるのが楽しい」など部員の目指す方向は様々だった。「同じ競技をやっていても、見てるものが違う」と痛感した。

 本を参考にポジションごとのリーダーの役割もはっきりさせ、責任を持たせるようにした。練習には短期間の目標を取り入れた。練習の質は確実に上がってきたと感じている。「でも、自己満足で終わっても仕方ない。秋の大会の結果で、成果が問われます」と話す。

     ◇

 なぜそれほど人気を呼ぶのか。キャリア教育に取り組むNPO法人「鳳雛(ほうすう)塾」(佐賀市)の横尾敏史事務局長は「初心者には難しいドラッカーの理論を、日常的なテーマを使ってわかりやすく書いている」と理由を推測する。

 横尾さんは23日、西九州大学佐賀調理製菓専門学校の授業で、開業したい生徒を意識して本を紹介。「我々の顧客は誰か。顧客にとっての価値は何か」と、主人公が野球部を見つめ直す時に考えた例を使いながら、マネジメントの基本に触れたという。

 本の発行は2009年12月。経営学と高校野球の組み合わせやアニメ風の表紙といった異色さが話題に。今年に入ってテレビなどで取り上げられ、売り上げは急増した。

 発行元のダイヤモンド社も驚く。経済関連書籍を多く扱う同社ではこれまで、米国の製造業の現場を舞台にしたビジネス小説「ザ・ゴール」(エリヤフ・ゴールドラット著)の約65万部発行が最多だった。宣伝担当者は「ビジネス関連の本は、売れてもせいぜい数十万部。100万部突破はうちで初めてで、想像もしていなかった」。

 作中で伝えられているドラッカーのマネジメント論は、マーケティングや人事の重要性など、基本の一部。早大教授でフリーライターの永江朗さんは「マネジメント論の入り口の入り口ぐらいにある本。企業の管理者の立場にいる人なら、すでに当然知っているべき内容だ。小説としての出来はよくないが、萌(も)え系の表紙などがマーケティング的に成功したのでは」と話しつつ、自己啓発書の一つとして時代にハマった面もあるとみる。「今は明確なリーダー像を示せる経営者がいない。誰かについていくのではなく、自分で仕事や生活のマネジメントをやらないと、という人々の思いにうまく入ったのだろう」(仲村和代、井上裕一)

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 〈「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」〉都立高校に通う川島みなみが、野球部のマネジャー就任時に、経営学の神様とされるピーター・ドラッカーの名著「マネジメント」を手にする。勘違いがきっかけだが、組織や企業のあり方、マネジメントの仕事、役割、使命など組織運営の全般を解説するこの本から、人材活用やマーケティングなどを学び、野球部で実践しながら、甲子園を目指すという物語。みなみは野球にかかわるほぼすべての人を「顧客」と見立て、感動を与えることを目指し、選手、監督との対話や部員の目標管理、役割分担といった「マネジメント」を通して、チームを活性化させていく。

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 〈「もしドラ」の著者で放送作家だった岩崎夏海さんの話〉高校野球の現場での活用は、もともと目的としていたところなので、実際に活用が広がっていることはうれしいです。現在のような不況下では、自分の幸せをどうつくりあげていくか、一人一人がこれまで以上に考えていく必要がある。その方策をドラッカーが示しているから、多くの人に読まれているのではないでしょうか。

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